円回内筋(pronator teres)

円回内筋の概要

円回内筋の起始・停止:上腕頭(内側上顆)+尺骨頭(鈎状突起)→橈骨外側面中央
円回内筋は前腕前面の表層屈筋群で、前腕の回内と軽度の肘屈曲に関与します。

上腕頭と尺骨頭の二頭を持ち、その間隙を正中神経が通過するため、攣縮や肥厚で円回内筋症候群(正中神経高位絞扼)を起こすことがあります。また、上腕頭は内側上顆炎(ゴルフ肘)と併発しやすい部位です。

基本データ

項目 内容
支配神経 正中神経
髄節 C6–C7
起始 ①上腕頭:内側上顆・内側上腕筋間中隔
②尺骨頭:鈎状突起内側
停止 橈骨外側面中央
栄養血管 尺骨動脈・橈骨動脈(枝)
主動作 前腕回内、肘屈曲の補助
筋体積 約80 cm³
筋線維長 約4.5 cm

運動貢献度(前腕回内)

  • 方形回内筋(PQ)は持続的・微細な回内で主働。

  • 円回内筋(PT)は素早い/抵抗下の回内肘屈曲位で活動が上がりやすい。

触診方法

  • ランドマーク:肘窩内側〜前腕近位1/3の斜走する索状部
  • 開始肢位:90°屈曲、前腕中間位→回内手関節は掌屈保持(長掌筋・手根屈筋群の代償を抑える)。
  • 手技:筋腹を橈尺方向にピンチングしつつ、回内抵抗で硬化を確認。
  • よくある誤り:手関節背屈や強い握り込み→前腕屈筋群の共同収縮で誤認。

ストレッチ

  • 手順:肘90°屈曲、棒やダンベルを持つ、重みを利用して前腕を他動的に回外させる(15–30秒×2–3セット)。
  • 注意:肘伸展し過ぎると方形回内筋への伸張が優位になるため肘は軽度屈曲を維持。

筋力トレーニング

  • 設定:前腕を台上に置き、手関節より遠位を外へ出す。軽量(0.5–2kg)から開始。
  • 動作:回外→ゆっくり回内(2–3秒)→停止1秒→戻す。12–15回×2–3セット、疼痛0–2/10の範囲。
  • フォーム:肘は90°屈曲を保ち肩の内旋代償を抑える。握り込みは軽く。

トリガーポイント(TP)

  • 主訴:肘内側〜前腕掌側の鈍痛・張り(把持や前腕回内で増悪)と、ときに正中神経様のしびれ・巧緻低下(いわゆる“回内筋症候群”様)。

  • 誘因:ドライバー/スクリュードライバー等の反復回内作業、マウス・キーボードでの長時間回内固定、投球・ラケット動作、ハンマー/荷物の把持運搬、肘屈曲+回内位の持続。

内側上顆に起始する主な筋

円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋・浅指屈筋
掌屈や把持で痛む場合は各筋の局所圧痛/抵抗テストで分離評価し、活動量の最適化と滑走を優先。


円回内筋症候群(高位正中神経絞扼)

  • 誘因:反復回内・肘屈曲動作、投球、工具作業。
  • 所見:前腕近位のしびれ・疼痛、把持・つまみ動作の低下。夜間悪化は手根管症候群に多く、鑑別の目安。
  • 鑑別:AIN症候群(感覚障害なし、OKサイン不能)/手根管(遠位でTinel陽性、夜間しびれ強)/内側上顆炎(局所圧痛+抵抗掌屈で増悪)。
  • 介入:負荷修正、回外ストレッチ、正中神経スライダー、前腕屈筋群の遠心コントロール、必要に応じ装具で肘屈曲+回内の反復を制限。

よくある質問(Q&A)

Q1. 円回内筋と方形回内筋、どちらを優先して鍛える?
A. 日常では近位の回内コントロール(PT)が崩れやすいのでPTの耐久性を先に底上げし、PQはアイソメトリック~低負荷の持続回内で併用が実用的です。

Q2. 円回内筋症候群と手根管の簡単な見分け方は?
A. 肘90°+抵抗回内で増悪するのは円回内筋症候群を示唆。夜間しびれ・朝のこわばり手根管に多く、遠位Tinel/Phalenも参考に。

Q3. ストレッチで肘は曲げる?伸ばす?
A. PTを狙うなら肘は伸ばすのが基本。肘屈曲はPTをたわませるため、伸張感が出にくい点に注意。


最終更新:2025-10-11