回転性めまい(前庭障害)の原因とリハビリ治療

めまいの型

  • 回転性:天井・床・景色がぐるぐる回る感じ(前庭系の不一致が強いと出やすい)

  • 浮動性/動揺性:ふわふわ・フワッと沈む・船酔い感(自律神経・循環・不安なども関与)

日常診療で多いのはBPPV(良性発作性頭位めまい)前庭神経炎前庭性片頭痛起立性低血圧/脱水などです。


末梢性 vs 中枢性(実戦向けの見分け)

所見 末梢性(内耳・前庭神経) 中枢性(脳幹・小脳など)
発症 突発・強い回転感、数秒〜数日(BPPVは数秒〜1分) 持続/断続。回転性のこともあるが姿勢での変化が乏しいことが多い
悪化因子 頭位変換で誘発/増悪(BPPV) 頭位に無関係が多い(例外あり)
眼振 水平回旋混合、視標固視で減弱、方向一定 垂直/方向交代性、固視で抑制されにくい
聴覚症状 あり(耳鳴・難聴・耳閉感:メニエール等)/なし(前庭神経炎) 通常なし
神経徴候 なし 小脳失調、複視、構音障害、顔面麻痺、感覚運動障害などを伴い得る

なぜ回転性めまいが出現するのか

めまいが起こる機序として、前庭感覚が障害される前の平衡感覚が脳内に残存しているため、現在の感覚との乖離によって起こるとされています。

それを修正するためには、現在の異常感覚を繰り返し行い、以前の感覚を修正することが必要です。

前庭障害でめまいが起こるメカニズム①|あり
前庭障害でめまいが起こるメカニズム①|なし

急性前庭症候群でのHINTS(医療従事者向け)

  • Head-Impulse:陰性(正常)+方向交代性眼振Skew偏倚あり中枢性疑い

  • 訓練や一般向け自己判断には不適。中枢性疑いは救急受診を。


レッドフラッグ(即受診/救急)

  • 新規の激しい頭痛構音障害複視嚥下困難四肢のしびれ・脱力歩行不能

  • 打撲・頭部外傷後、持続する垂直眼振意識障害

  • 高リスク(高血圧・糖尿病・心房細動・抗凝固中・高齢)で急性持続性めまい


主な疾患とヒント

  • BPPV:頭位で数秒の強い回転性。Dix–Hallpikeで誘発、Epley(後半規管)で改善。

  • メニエール病:発作性(20分〜数時間)の回転性+耳鳴・難聴・耳閉感

  • 前庭神経炎:数日続く強い回転性、聴力は保たれる

  • 迷路炎:めまい+感音難聴

  • 前庭性片頭痛:片頭痛既往、光過敏・音過敏を伴うこと。

  • 起立性低血圧/脱水:立ち上がり直後のふらつき、倦怠・動悸。

  • 頚性めまい:頚部痛・可動域制限に随伴(診断は除外的・エビデンスは限定的)。


前庭リハビリ(3本柱)

  1. 前庭(VOR)強化

    • VOR×1:ターゲットを壁に貼り、頭を水平/垂直に小刻みに振り1分固定凝視 × 3–5セット/日(症状5/10未満で調整)

    • VOR×2:ターゲットと頭を逆方向へ同時移動(慣れてから)

  2. 慣れ(ハビチュエーション)/感覚の上書き

    • Brandt–Daroff:坐位↔側臥位を交互にめまいが出る角度まで素早く移行し各30–60秒保持、5往復×2–3セット/日

    • 生活でめまいが出る動き安全確保の上、許容範囲で反復

  3. 代償(視覚・体性感覚)

    • 眼先行→頭追随の固視練習

    • バランス課題:閉眼・フォームマットなどで体性感覚入力を増やす(段階付け)

目標は「症状0ではなく機能回復」。症状は一過性に2–3/10まで増えても、5/10以上は控えて回数や速度を調整。


BPPVの運動療法

1) 後半規管 半規管結石症(最多)→ Epley法

  • (左患側例)

    1. 座位:頭部を左45°

    2. 速やかに仰臥位頭位後屈(約20–30°)で30–60秒

    3. 頭を右へ90°回して30–60秒

    4. 体を右側臥位へ(鼻先を床へ向ける)30–60秒

    5. 座位へ起こす(必要なら頚屈**30°**で終了)

  • 目安:1–3回/日数日。翌24–48時間は強い仰頭を避ける。

2) 後半規管 クプラ結石症Semont(解放)法

  • (左患側例)

    1. 座位で頭を右45°

    2. 素早く左側臥位(頭部伸展気味)で1–2分

    3. 続けて反対の右側臥位へ一気に移行(鼻先は床向き)で1–2分

    4. 座位へ戻す

水平半規管型が疑わしい場合はsupine roll testで確認し、BBQロール(Lempert)法等を選択。

施行時の注意

  • 頚椎症・椎骨動脈不全・高度脊柱可動域制限禁忌/要配慮。不安があれば医師へ相談

  • 強い悪心嘔吐や神経症状が出たら中止


机上の鑑別ショートフロー(非救急)

  1. 神経徴候あり?→ 中枢性疑いで医療受診

  2. 頭位で数秒の回転性?→ BPPVを疑いDix–Hallpike

  3. 持続性(数時間〜日)で聴力保たれる?→ 前庭神経炎候補

  4. めまい+耳鳴/難聴?→ メニエール/迷路炎など

  5. 起立時のみふらつき?→ 起立性低血圧・脱水評価


よくある質問(Q&A)

Q1. めまいは安静が一番?
A. 中枢性を除外でき、急性期を過ぎた末梢性前庭リハが回復を早めます。完全安静は回復を遅らせることがあります。

Q2. 何科に行けば?
A. 急性・神経症状ありは救急/脳神経外科。反復する回転性・耳症状は**耳鼻咽喉科(めまい外来)**が有用。

Q3. 自宅でEpleyをしていい?
A. 診断がBPPVで手技理解があるなら可。ただし頚椎リスク強い嘔気があるなら医療者の監督下で。

Q4. どれくらいで良くなる?
A. BPPVは数日〜数週で改善することが多い。前庭神経炎は数週〜数か月で代償が進みます(個人差大)。


最終更新:2025-09-21