母趾外転筋(abductor hallucis)

母趾外転筋の概要

母趾外転筋の起始停止

母趾外転筋は、母趾を外転させる主力筋であり、足底内側縁に沿って走行しています。
遠位で短母趾屈筋の内側腱と合流するため、母趾MP関節の屈曲にも副次的に作用します。

さらに母趾球の内側の膨らみを形成し、足底縦アーチ(土踏まず)の保持にも貢献しています。

基本データ

項目 内容
支配神経 内側足底神経
髄節 S1-2
起始 屈筋支帯、踵骨隆起の内側突起、足底腱膜
停止 1基節骨の底、第1中足骨の内側種子骨、短母趾屈筋腱と合流
動作 母趾外転
母趾MP関節屈曲(副次的作用)

臨床的特徴

圧痛点と関連痛

  • 主訴:足底内側縦アーチ〜母趾基部(母趾MTP内側)の灼熱感・しびれ感を伴う足底痛で、朝の一歩目や歩行開始時に強く出る。

  • 誘因:扁平足気味での長時間立位・歩行、硬い路面での歩行やラン、きつい(内側を圧する)靴の着用、足部内がえしの反復。

筋痙攣(足趾の“つり”)

  • 内在筋痙攣の一因としてしばしば関与。訴えがある場合、母趾外転筋・FHBの緊張と脱水・冷え・過使用の確認が有用。

関連する疾患

  • 外反母趾:腱が足底側に回り込み外転力が低下。母趾球筋群(特に母趾外転筋・FHB)の筋力低下と、母趾中足骨の過内転外反母趾角の進行に関与。

  • 開張足/扁平足障害/中足骨頭部痛/足底胼胝:母趾球筋群の機能低下と内側縦アーチ支持不全を併発しやすい。


評価(触診・機能テスト)

触診

  • 体位:背臥位または座位、足部リラックス。

  • 手技:舟状骨結節〜母趾球内側に沿って母趾外転方向へ軽く収縮を指示すると、内側縁の紐状〜紡錘状の張りが触れやすい。過圧はNG。

簡便MMT

  • MPを軽度屈曲位にし、母趾を第2趾から離す方向(外転)へ等尺抵抗左右差・保持を確認(FHB代償が強い場合はMP屈曲が先行するので注意)。


介入(トレーニング/ストレッチ)

トレーニング

  • ショートフット(ドーミング):内側縦アーチを“すくい上げる”ように母趾球と踵の距離をわずかに近づける

  • トー・スプレッド・アウト(TSO)母趾を外転+軽いMP屈曲で保持(5–10秒×反復)。セラバンドで内側誘導→外転抵抗も有効。

  • 荷重位母趾球—第5中足骨頭—踵三脚支持で立位保持→母趾外転を軽く保持したままスクワット等へ応用。

ストレッチ(過緊張時)

  • 母趾の内転・背屈方向へ軽く誘導し、母趾球内側—舟状骨結節の筋膜を軽圧でスライド。痛みは中止の合図。


よくある質問(Q&A)

Q1. 主な働きは?
A. 母趾外転が主作用で、MP関節の軽度屈曲副次的に助けます。内側縦アーチの支持にも寄与します。

Q2. 弱化すると?
A. 母趾球筋群の機能低下により、外反母趾扁平足の進行、前足部内側の過荷重に関与しやすくなります。

Q3. 痛みはどこに出やすい?
A. 母趾球内側〜内側縦アーチの圧痛が多く、症例により内側足背へ関連痛を訴えることもあります。

Q4. 筋痙攣と関係する?
A. はい。**足趾の“つり”**の一因となることがあり、内在筋の疲労・冷え・電解質不足が関与します。

Q5. どう鍛えるのが効率的?
A. ショートフット+TSOが基本。三脚支持の荷重位で外転保持を学習し、歩行・スクワットへ段階的に統合します。


最終更新:2025-09-18