短内転筋(adductor brevis)

短内転筋の概要

短内転筋の起始停止

短内転筋の起始停止2

短内転筋は大内転筋の前方を走る内転群の中間層で、表層を恥骨筋・長内転筋に覆われます。主作用は股関節内転。肢位によってわずかな屈曲・内旋にも寄与します(とくに外転位/屈曲位で内旋成分が出やすい)。

基本データ

項目 内容
支配神経 閉鎖神経 前枝(個体差で後枝からの枝もあり得る)
髄節 L2-4
起始 恥骨下枝(下方)
停止 大腿骨粗線内側唇の近位1/3(+小転子遠位の稜へ連続することあり)
栄養血管 閉鎖動脈
動作

:股関節内転
:股関節屈曲の軽い補助外転位/屈曲位での内旋補助

筋体積 124
筋線維長 7.4
速筋:遅筋(%) 50.050.0

運動貢献度(臨床目安)

運動 主役 協働 備考
股関節内転 大内転筋 長内転筋/短内転筋/薄筋 体位・角度で寄与が変動
股関節屈曲(0–60°) 腸腰筋 長内転筋/短内転筋 屈曲が深いほど内転群の伸展寄与へシフト
股関節内旋(外転・屈曲位) TFL/中殿筋前部 短内転筋(補助) 角度依存で小さめの寄与

触診・評価(MMTのコツ)

  • 体位座位または仰臥位軽外転位から内転を誘導。

  • 触診ライン長内転筋の深層/大内転筋の前方の隙間に指腹を滑り込ませ、内転抵抗で立ち上がる索状をとらえる。

  • 抵抗方向:大腿遠位内側を把持し、外側(外転)へ押し戻す

  • 代償骨盤側屈/回旋、股関節内外旋の逃げに注意。膝を内向きにして代償的な“ニーイン”が出やすい。


ストレッチ

  • バタフライ(あぐら)で骨盤前傾を保持しつつ外転+わずかな伸展

  • ポイント:腰椎屈曲や骨盤回旋でごまかさない鼡径部痛は回避し、張り感まで。


筋力トレーニング

  • チューブ/ケーブル内転(立位・側臥):骨盤正対、股関節中間回旋をキープ。

  • ボール挟み等尺:膝90°で内転等尺→反復

  • フォーム管理体幹側屈・骨盤回旋を抑え、動きは股関節から


臨床メモ

  • トリガーポイント/関連痛恥骨付着近位に圧痛が出やすく、大腿内側〜膝内側上方に放散することがある。

  • スポーツ現場ラン・キック・方向転換で**伸張痛(外転)+抵抗痛(内転)**が揃えば内転筋由来を疑う。

  • グロイン痛鑑別腸腰筋/恥骨結合/鼠径部神経など多因子。触診圧痛と抵抗テストで切り分ける。


Q&A(よくある疑問)

Q1:短内転筋と長内転筋、どう分けて触る?
A:長内転筋は表層の索状でわかりやすい。短内転筋はその深層長内転筋と大内転筋の間抵抗内転時に硬くなる帯を探す。

Q2:内旋に効くって本当?
A:外転位・屈曲位など特定肢位で内旋モーメントが小さく加わる。主役はTFL/中殿筋前部で、ABは補助と考えると臨床運用しやすい。

Q3:ストレッチで腰が丸くなる
A:骨盤前傾を最優先。腰椎屈曲だと内転筋の伸張が逃げる。座面を高くして坐骨前方荷重を作ると良い。

Q4:内転トレで膝が内側に流れる
A:**膝頭を正面(ニーアウト)**の合図。骨盤・体幹の固定を足して代償をブロック。

Q5:屈曲と伸展、どっちに効く?
A:0–60°屈曲域では屈曲寄与、深屈曲からの戻しでは伸展寄与が相対的に増える(内転群の一般的傾向)。


最終更新:2025-10-07