腋窩神経の概要(C5–C6)
起始:腕神経叢の後神経束から分岐(主根はC5–C6。まれにC7が参加)。
走行:腋窩深部で四角間隙(外側腋窩隙)を通過し、後上腕回旋動脈とともに上腕骨外科頸を後方から巻く。
分枝:上腕骨後面で前枝と後枝に分岐。
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前枝:三角筋へ運動枝を出しつつ前方へ。
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後枝:小円筋へ運動枝を出し、さらに上外側上腕皮神経(superior lateral cutaneous n. of arm:皮枝)に移行。
関節枝:肩関節包へ微小枝(痛みの評価時に参考)。
支配筋(腋窩神経系)
| 分枝 | 支配筋 |
|---|---|
| 前枝 | 三角筋(前・中・後部) |
| 後枝 | 小円筋(+上外側上腕皮神経:皮枝) |
評価の注意
外旋筋力で小円筋を適切にみるには肩90°屈曲位や90°外転位での外旋抵抗が有用。下垂位の外旋は**棘下筋(肩甲上神経)**が主働となり、小円筋障害を反映しにくい。
知覚領域
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**上外側上腕皮神経(後枝)**が、**上腕近位外側(いわゆる“レジメンタルバッジ”領域)**の皮膚感覚を支配。
主な絞扼・障害と臨床像
徒手的検査(実地のコツ)
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触診誘発:大円筋と小円筋の間(上腕三頭筋長頭の外側縁直外側)に指先を入れ、腋窩神経走行部を軽く圧迫して疼痛・放散の有無を確認。
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肢位誘発:**肩外転(とくに90°以上)**で四角間隙は狭小化。他動的に外転→水平屈曲・外旋を加え、症状の再現/増悪を確認。
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筋力評価:
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三角筋:肩外転(スカプション10–20°前方)でMMT。
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小円筋:90°外転位または90°屈曲位で外旋抵抗。
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鑑別補助:C5根障害や肩甲上神経障害(棘下筋)、腱板断裂も併せてスクリーニング。
リハビリテーション(可逆性麻痺を想定)
1) 原因評価・活動調整
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反復的な外転・外旋位/肩後方タイトネス/姿勢(胸郭・肩甲帯)を点検し、誘発肢位の回避と運動連鎖の最適化を指導。
2) 軟部組織アプローチ
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小円筋・大円筋・上腕三頭筋長頭の緊張や短縮を触診。軽圧・持続伸張・収縮弛緩など、症状が再現しない強度で実施。必要に応じて物理療法を補助的に。
3) 神経滑走(症状に応じて慎重に)
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Axillary nerve glide/slideを低強度・短時間から。痺れや痛みが残る強度は回避。
4) 可動域(ROM)
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肩関節の外旋・水平伸展方向のタイトネス(後方カプセル短縮)を評価し、肩甲胸郭リズムを整えつつROM確保。神経・血管へのストレスがない範囲で。
5) 筋力トレーニング
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三角筋:等尺→等張、スカプション位外転から開始し、外旋同時課題へ段階化。
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小円筋:90°外転位外旋の低負荷・高回数から、エキセントリックと**肩甲帯安定化(下角のコントロール)**を併用。
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痛み・神経症状が鎮静し、MMT3以上で機能的な自動運動を拡大。
6) 装具・保護
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明確な筋力低下でADLに支障が強い時期は肩関節の過度外転・外旋を避ける支持を一時的に検討(常時固定は回避し、早期の痛みなき可動・筋賦活を優先)。
予後・外科
多くは保存で改善。電気生理(2–4週以降)で再生所見が乏しく、3–6か月で回復遅延や明確な絞扼病変があれば医師と外科的減圧の検討。
よくある質問(Q&A)
Q1. 腋窩神経はC5–7ですか?
A. 主根はC5–C6です。C7が加わることもありますが標準はC5–C6。
Q2. 三角筋が落ちているが、腱板断裂との見分けは?
A. 腱板断裂は外旋・挙上での疼痛と筋力低下が主体で感覚障害は基本なし。腋窩神経障害は上腕外側の感覚低下(レジメンタルバッジ)と三角筋の一様な脱力が手掛かり。
Q3. 小円筋の筋力はどの姿勢で測る?
A. 90°外転位や90°屈曲位での外旋抵抗が適切。下垂位外旋は棘下筋に依存しやすく、小円筋の低下を拾いにくい。
Q4. 四角間隙症候群で痛みが出やすい肢位は?
A. **肩外転+外旋(+水平屈曲)**で隙間が狭くなり、症状が誘発・増悪しやすい。
Q5. いつ神経滑走を始める?
A. 急性炎症期は避ける。疼痛が落ち着き始めたら低強度で試行し、症状再燃があれば即中止。
最終更新:2025-10-02


