1)腰仙関節(L5–S1)の概要
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構成:
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椎間関節(Z関節):第5腰椎の下関節突起と仙骨の上関節突起による平面(滑走)関節。
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椎間板:L5–S1椎体間に存在する線維軟骨性の連結。
※原稿の「椎間関節と同様で、椎間板も内在」は混同されやすいので明確化:椎間関節そのものには椎間板は含まれません。L5–S1“運動ユニット”として両者が併存します。
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特徴:
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L5椎体は脊柱で最大級かつ荷重集中部位。椎間板ヘルニアや椎間関節性疼痛が生じやすい。
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可動域(代表値):屈曲・伸展 ≈ 〜20°、側屈 ≈ 〜3°、回旋 ≈ 〜2–3°。
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関節面配向:腰椎下位ほど冠状面成分↑(側屈許容)だが、L5–S1は矢状面成分も保持し滑り制御に寄与。
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2)仙腸関節(SIJ)の概要
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構成:仙骨耳状面と寛骨(腸骨)耳状面の不規則平面関節。
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前上部は滑膜関節(関節包+滑液)、後下部は強靱な靱帯性連結(骨間仙腸靱帯など)。
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いわゆる「半関節」と表現されることがあるが、滑膜関節の一種である点は明示しておくと誤解が少ない。
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可動性:きわめて小さい。
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仙骨の前屈(ニューテーション) ≈ 〜1–3°、後屈(カウンターニューテーション) ≈ 〜1–3°。
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変位は1–2 mm程度とされることが多い。
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機能:上半身荷重を寛骨へ伝達し、靱帯群・筋膜で受動安定性を確保。歩行時には微小なスリップとロックで衝撃分散に寄与。
3)骨盤の可動性
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前傾・後傾(sagittal tilt)
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左右回旋(axial rotation)
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側方傾斜(挙上・下制)(lateral tilt:ハイクレスト/ロークレスト)
4)仙腸関節周囲の靱帯(前面/後面)
仙腸関節の周囲には靱帯が密集し、とても強固に結束しています。そのため、全体の動きは1-2㎜程度になります。
仙腸関節障害における圧痛は、仙腸関節裂隙より外側で認められる場合が多いことから、主に後仙腸靱帯由来の痛みと考えられています。
| 1.仙腸関節周囲の靱帯(前面) |
![]() |
| 2.仙腸関節周囲の靱帯(後面) |
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仙腸関節は靱帯密度が高く非常に強固。痛みは関節裂隙のやや外側(後仙腸靱帯領域)に圧痛が出ることが多い所見が知られます。
| 靱帯 | 主な機能・臨床メモ |
|---|---|
| 腸腰(腸骨腰)靱帯(Iliolumbar) | L5横突起→腸骨稜。L5安定化・腰仙移行部の剪断抑制 |
| 腰仙靱帯(Lumbosacral) | L5→仙骨。前方すべり抑制。腸腰靱帯の一部として扱う文献も |
| 骨間仙腸靱帯(Interosseous SI) | 仙骨と腸骨の最強の固定要素。SIJの主要安定化 |
| 前仙腸靱帯(Anterior SI) | 前面の関節包補強。前方開大の抑制 |
| 後仙腸靱帯(Posterior SI:短・長) | 後面の強力な固定。圧痛の好発部位 |
| 仙結節靱帯(Sacro-tuberous) | 仙骨→坐骨結節。ニューテーション抵抗、大殿筋線維と連結(起始補強) |
| 仙棘靱帯(Sacro-spinous) | 仙骨→坐骨棘。仙骨の過度な回旋・外転様変位の抑制、骨盤出口形成に関与 |
| (外側)仙尾靱帯 | 仙尾関節の補強・安定化 |
原稿の「外側仙尾関節」は**靱帯の名称としては「外側仙尾靱帯」**の表記が一般的です。
よくある質問(Q&A)
Q1. SIJの“数ミリ・数度しか動かない”のに、なぜ痛みが出る?
A. 微小な剪断・圧縮ストレスや靱帯性の痛覚受容(特に後仙腸靱帯)、関節面の形状不整、産後の靱帯弛緩などが関与。荷重線・歩容・股関節可動性の評価が鍵。
Q2. L5–S1の疼痛で“椎間板性”と“椎間関節性”はどう見分ける?
A. 椎間板性は屈曲で増悪、座位で増悪しやすく、咳・くしゃみで誘発。椎間関節性は伸展・回旋で増悪しやすく、局所圧痛やKemp徴候陽性が手掛かり。
Q3. SIJ障害の徒手誘発テストは何を組み合わせる?
A. Gaenslen、Thigh Thrust、Compression、Distraction、Sacral ThrustなどのClusterで3/5以上陽性を目安(単独テストより感度・特異度向上)。
Q4. 産後に骨盤帯痛が強いのはなぜ?
A. リラキシン等による靱帯弛緩と荷重線の変化、腹圧・殿筋群の力学的バランス崩れ。骨盤ベルト(適正ポジション)+股関節外転・伸展筋、腹圧システムの再学習が有効。
Q5. “骨盤の歪み”をどう説明する?
A. 解剖学的には微小可動域の配分差や筋・筋膜テンションの非対称が“歪み”の実体。姿勢・動作と疼痛再現因子に基づいて具体的な運動再教育へ落とし込むのが実践的。
Q6. L5–S1の回旋は小さいのに回旋痛が出るのは?
A. 回旋時に伴う圧縮・剪断の二次ストレスが椎間関節包や椎間板繊維輪を刺激。股関節回旋可動域不足の代償も要チェック。
まとめ(臨床ポイント)
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腰仙移行部は荷重集中+可動配分が大きいため、屈伸方向の管理が重要。
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SIJは“強固+微小可動”——靱帯・筋膜連結と股関節・胸郭まで含めた力学連鎖で評価・介入。
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疼痛源は単独とは限らず併存しやすい(L5–S1椎間板+SIJなど)。誘発・軽減因子で切り分ける。
最終更新:2025-09-30



