腱板機能不全による肩関節不安定症について

要点サマリ

  • その“ズキッ”は**腱板(棘上・棘下・小円・肩甲下)**の出力低下→上腕骨頭の逸脱(上方・外上方)→挟み込み・摩擦で生じることが多い。

  • 代償的に三角筋や肩甲挙筋・僧帽筋上部が過収縮し、頸~肩の凝りを伴いやすい。

  • 筋力の“量”より“方向”を回復(骨頭を関節窩へ引き付けて回転させる力)。

  • 症状軽度でも負荷テスト(1kg前後)で不安定性が露呈することがある。


腱板の役割と壊れ方の傾向

  • 構成:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋

  • 役目:骨頭を関節窩へ求心化しつつ回転を制御

  • 断裂・機能不全の頻度:棘上>棘下>肩甲下>小円

  • 骨形態・動作により肩峰—大結節だけでなく肩峰—小結節の衝突(特に屈曲・水平内転系)も起こり、肩甲下筋障害が潜むことあり。


典型的な訴え

  • 「ある角度でだけ急激な痛み」「ゴリゴリ音や引っ掛かり」「首~肩の凝りがセット」

  • 夜間痛や挙上困難が強いと器質的損傷(部分/全層断裂)を疑う。


簡易評価(臨床向けメモ)

すべて肩甲帯の固定(肩甲骨の浮き上がり抑制)が肝要。左右差と痛み・代償筋を観察。

1) 棘上筋(挙上初動の安定化)

  • 側臥位:肩屈曲≈30°で外転反復

  • 軽負荷で陰性なら1kgダンベル追加。

  • 所見:ゴリゴリ・痛み=三角筋中部優位で骨頭上方偏位。肩甲挙筋・僧帽上部の代償出現。

2) 棘下筋(外旋安定化)

  • 側臥位:肘90°屈曲・内旋位(手掌腹部)→外旋反復。脇は閉じる。

  • 所見:三角筋後部優位で外上方偏位、肩甲内側縁(菱形筋領域)の張りを伴いやすい。

  • 同様に1kg負荷で顕在化することあり。

3) 肩甲下筋(内旋・前方安定化)

  • 座位:肘90°屈曲で腹部を内旋で押す(Belly-press)。

  • 所見:出力低下や痛み、大胸筋・広背筋の代償。

  • 屈曲・水平内転での挟み込み既往(雑巾がけ等)に注意。

参考:屈曲では小結節接触が増→肩甲下筋リスク、外転・挙上外旋では大結節接触が増→棘上・棘下リスク。


なぜ首~肩の凝りが同時に?

  • 筋膜連結(例:棘上筋↔肩甲挙筋、棘下筋↔菱形筋)により、腱板の不足分を隣接筋が代償→過緊張・圧痛。

  • 三角筋の硬結も**“結果”**であり、原因筋(腱板)を見落とさない。


介入の原則(痛みを増やさずに“求心化”を取り戻す)

フェーズ1:鎮痛・滑走改善

  • 肩峰下圧を上げない範囲で肩甲帯セッティング(下制・後退の軽い意識)。

  • 後方・前方関節包の軽モビライゼーション、肩峰下の軟部組織滑走(棘上筋腱周囲、烏口下~小結節前方)。

  • 急性増悪期は挟み込み角度回避(痛み再現角への反復は×)。

フェーズ2:腱板の方向性トレ

  • 等尺性から開始:

    • 外転0–30°等尺(棘上)

    • 脇閉じ外旋等尺(棘下・小円)

    • Belly-press等尺(肩甲下)

  • 三角筋優位にならないよう軽負荷・高頻度・痛み0–3/10で。

フェーズ3:求心化を保った動作再学習

  • サイドライイング外転(肩屈曲30°セット)で滑らかさ優先、1kg前後→段階的に。

  • エクスターナルローテーション(脇閉じ)30°外転位ERへ進行。

  • 屈曲系は肩甲下筋の痛み誘発角を避け、前鋸筋・下部僧帽筋の協調を同時に。

重い荷上げ反復やオーバーヘッド作業は腱板出力が戻るまで制限。夜間痛・脱力・外傷歴は画像精査を検討。


よくある質問(Q&A)

Q1. 三角筋を鍛えれば早く治る?
A. 三角筋単独強化は骨頭上方偏位を助長しやすく逆効果。まず腱板の求心化を作ってから。

Q2. 首の凝りが取れません。
A. 棘上筋機能不全の肩甲挙筋代償が典型。頸のマッサージだけでは再発。腱板の出力回復が先です。

Q3. どのくらいで改善する?
A. 生活制限と運動順守で2–6週に動作痛の減少が目標。部分断裂・石灰沈着などは長期化あり。

Q4. 断裂があると言われたら必ず手術?
A. 部分断裂の多くは保存療法で改善。夜間痛が強い/力が入らない/外傷での急性全層は整形外科と相談。

Q5. 自宅でできる安全なメニューは?
A. 脇を閉じての軽い外旋等尺Belly-press等尺肩甲帯下制・後退のセッティングを“痛くない範囲”で毎日。


最終更新:2025-10-07