まず押さえる全体像(評価の順番)
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痛みの場所(前・後・内外側・膝蓋骨周囲)
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誘発肢位(伸展末期/屈曲末期、荷重の有無)
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“硬い側”と“潰れ側”の推定
→ 硬い側を先に処置し、潰れ側の挟み込みを回避(トランスレーション理論)
伸展制限の主因と対処
① 膝蓋下脂肪体(最頻)
所見:他動伸展で膝蓋骨下縁の鋭い痛み/つっかえ感。
機序:伸展時、脂肪体が膝蓋骨下方に移動できず挟み込み。
介入
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膝蓋下脂肪体の軟部組織リリース(膝伸展位で膝蓋骨下極〜外内側を母指で穏やかに)
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膝蓋骨の遠位モビライゼーション→脂肪体を関節内へ誘導
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パテラセッティングで滑走性回復(小反復・痛み0–3/10)
② 後方筋群(ハムストリングスなど)
所見:伸展末期で膝窩側の伸張痛へ移行してくる。
機序:後方短縮→伸展で大腿骨が前方へブレ(translation)。
介入
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大腿骨を後方へ保持する感覚で、軽い圧を加えつつ伸張
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痛覚過敏が強い場合は遠位からの筋膜介入→再伸張
③ 下腿外旋症候群(ニーイン・トーアウト連鎖)
所見:女性に多い/伸展末期で前外側の違和感・痛み。
機序:外旋位で膝蓋骨が外側に偏位→脂肪体が内側に圧追。
介入
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下腿を軽い内旋誘導で伸展ストレッチ(外旋は悪化要因)
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併行して外側膝蓋支帯の柔軟化、内側広筋のタイミング再学習
屈曲制限の主因と対処
① 膝蓋上包(最頻)
所見:屈曲末期で前上部の突っ張り/既往に関節水腫。
機序:炎症後の癒着でキャタピラ状滑走が障害。
介入
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膝蓋骨上縁から上包のつまみ上げ/横滑りを回復
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その後の屈曲反復で滑走学習
② 半月板(後節の挟み込み)
所見:屈曲で膝裏痛(“潰れ痛”)。前方は伸張痛。
機序:前方組織短縮→屈曲で大腿骨が後方へブレ。
介入
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先に膝蓋上包を解放
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屈曲時は膝窩に手指を当て軽牽引(必要に応じ下腿内旋)で挟み込み回避
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無痛域で反復→段階的に終末域へ
③ 後方筋群(ハムストリングスの異常収縮/滑走不全)
所見:屈曲で筋性の攣縮様痛/膝窩筋膜の牽引痛。
介入
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腹臥位で大腿後面中央の筋膜リリース→圧迫保持+小可動
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痛み0–3/10に収まる範囲で屈曲反復
④ 膝蓋下脂肪体(PF関節狭小化例)
所見:軽い屈伸でも前内側の擦れる痛み/軋轢音。
介入
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脂肪体の深部リリース+膝蓋骨モビライゼーションで間隙確保
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荷重屈曲で増悪するなら、まずは非荷重可動→段階的荷重
クリニカルパール(実践のコツ)
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“前側が伸張痛/後側が潰れ痛”を聞き分ける→処方が真逆。
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**硬い側(原因側)→潰れ側(結果側)**の順で介入。
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伸展で外側に痛い+外偏位あり:外側支帯と脂肪体が主役。
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屈曲リハの前に上包、伸展リハの前に脂肪体——が基本線。
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ラテラルスラスト・ニーイントーアウトがあれば、内側広筋のタイミング再学習(リズミカル・小反復)を早期から。
よくある質問(Q&A)
Q1:痛い側をそのまま“強めに”伸ばしていい?
A:潰れ痛(はさまれ感)は禁忌。まず**原因側の硬さを緩める→挟み込みを避ける操作(牽引・内外旋誘導)**を入れてから可動域を広げます。
Q2:スクリューホームに合わせて“下腿外旋で伸展”は正しい?
A:外旋症候群では悪化しがち。軽い内旋誘導で脂肪体のスペースを作り、痛みが落ち着いてから自然な連鎖へ戻します。
Q3:膝蓋上包と脂肪体、どちらを先に?
A:屈曲制限優位→上包を先、伸展制限優位→脂肪体を先が目安。症状が混在する場合は痛みの強い側から。
Q4:荷重で痛いのに非荷重では曲がる/伸びるのは?
A:PF関節の圧縮(四頭筋収縮)やラテラルスラストが関与。まず脂肪体・支帯・上包の滑走改善→その後荷重課題へ進みます。
最終更新:2025-10-08





