足関節は荷重関節でありながら構造的に安定しており、痛みの背景は「不安定性」「反復圧縮(インピンジメント)」「過用(腱・脂肪体の炎症)」のいずれか(しばしば併存)に整理できます。主要疾患を簡潔にアップデートしました。
① 変形性足関節症(足関節炎)
ポイント
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骨性安定+強固な靱帯により発症頻度は股・膝より低い。
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不安定性(捻挫反復や骨折後)で荷重分散が崩れ、前内側痛が出やすい。しゃがみ込み・歩行で増悪。
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RAでも足関節炎は起こりやすいので多関節の炎症があれば鑑別に挙げる。
対応 -
炎症期は免荷(杖・装具)+固定、疼痛軽減と腫脹管理。
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変形が進むと軟部組織のインピンジメントが残痛の原因に。
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改善不十分例は固定術/人工足関節を検討。
② 前距腓靱帯(ATFL)損傷
ポイント
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足関節捻挫はスポーツ障害の15–25%。外側靱帯(ATFL・CFL・PTFL)の中でATFLが最多。
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伸張ストレスで痛み/腫脹。半数が慢性不安定症に移行しやすい(固有感覚低下など)。
対応 -
急性期のRICE+適切固定が再発予防の要。
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早期から背屈可動域の回復、バランス/固有感覚トレを段階的に実施。
③ 足関節前方インピンジメント症候群
ポイント
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伸筋腱深層の前方三角形脂肪体が過度背屈で挟み込まれ炎症。
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過度に背屈を要する競技(サッカー等)で増加=フットボーラーズ・アンクル。
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他動背屈で前方深部の圧痛再現。
対応 -
軟部組織(脂肪体)へのダイレクトマッサージ、徒手で滑走性改善。
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施術前の温熱・超音波で軟化→手技の効果アップ。
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背屈制限の背景(距骨前方偏位、下腿三頭筋タイト)を合わせて是正。
④ Bassett’s 靱帯肥厚(前距腓靱帯遠位線維束)
ポイント
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ATFL遠位束が背屈で挟み込まれ疼痛。捻挫後の瘢痕化・肥厚が誘因。
対応 -
急性期は安静・固定で炎症遷延を抑制。
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亜急性〜慢性は線維束ストレッチ/前外側滑走改善。難治例は鏡視下デブリも選択肢。
⑤ 腓骨皮下滑液包炎
ポイント
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外果前方の皮下滑液包が機械刺激(座位での前方圧迫、装具擦れ等)や感染で炎症。
対応 -
安静・圧迫・穿刺で減圧。圧迫因子(正座・靴)を回避。
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感染例は切開排膿+抗菌薬、難治例は滑液包切除。
⑥ 前脛骨筋腱炎
ポイント
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背屈抵抗で前内側痛。ウォーキング習慣のある中高年でも過用で発生。
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筋腹(下腿前面中央)の圧痛で評価。
対応 -
運動一時中止→炎症鎮静。
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回復期に前脛骨筋ストレッチ、足部アライメント(過回内など)を矯正。必要に応じインソール。
現場で役立つミニ鑑別
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他動背屈で前方深部が痛い/押して痛い → 前方インピンジメント(脂肪体・Bassett’s)
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内反受傷歴+外側前方圧痛 → ATFL損傷
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荷重・しゃがみで前内側痛、X線変化 → 変形性足関節症
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背屈抵抗で腱付着部痛 → 前脛骨筋腱炎
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外果前方の表在腫脹・圧痛 → 皮下滑液包炎
リハビリの基本プロトコル
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炎症期:免荷・固定・アイシング/圧迫・挙上(PEACE & LOVEの原則)
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可動域:早期から背屈角度の回復(距骨後方滑り誘導、下腿三頭筋の選択的ストレッチ)
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安定化:固有感覚(片脚立位、BOSU, スターパターン)→前額面・水平面制御
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復帰:競技特異的ドリル(カッティング・ストップ&ゴー)で再発予防
よくある質問(Q&A)
Q1. 捻挫は“動かしたほうが早く治る”?
A. 急性期は動かし過ぎは禁物。腫れや痛みが落ち着いたら段階的な可動域回復と固有感覚訓練を早期導入します。
Q2. 足関節症で関節自体は痛むの?
A. 関節軟骨自体は痛覚が乏しく、痛みは主に滑膜・関節包・周囲軟部組織由来。炎症が引くと痛みは軽減しやすいです。
Q3. 再発を防ぐ一番のコツは?
A. 背屈可動域の確保と固有感覚の回復。テーピングや足関節ブレースは復帰初期に有効。
Q4. いつ受診すべき?
A. 明らかな変形、体重支持不可、夜間痛が続く、広範な腫脹・熱感、発熱や創部発赤(感染疑い)があれば速やかに医療機関へ。
最終更新:2025-10-06





