関節拘縮の原因とアプローチ

関節拘縮の原因

関節可動域制限(拘縮)は、単一原因よりも複数組織の複合で起きることが多いです。原則はつねに――
表層 → 深層へ(皮膚/筋膜 → 筋 → 腱 → 関節包/靭帯)。
表層の抵抗が残ったまま深部をいじっても、痛みと防御でロックが掛かります。


1) 皮膚(瘢痕・癒着・スライド低下)

  • 所見:最終域での“ツッパリ感”、皮膚の滑走不良(skin rollingで引っかかる)、手術創周囲の硬結。

  • アプローチ:温熱→スキンストレッチ/スキンローリング→創周囲の穏やかな瘢痕モビライゼーション
    痛み<2/10で実施、赤みが長く残る刺激は避ける

2) 筋・筋膜

A. 筋攣縮(防御・こわばり)

  • 機序:痛み→交感亢進→虚血→発痛物質→さらに緊張、のループ。

  • 所見:弾性抵抗が”早め”に出る/等尺抵抗で痛み増、温熱で改善。

  • アプローチ軽擦・持続圧、呼吸合わせ、等尺収縮→ゆるむ(PIR)自律神経ケア(ゆっくり呼気)。

B. 筋短縮(構造的)

  • 機序サルコメア減少、筋膜の線維化/架橋で伸び代が減る。

筋短縮の原理|線維化②

  • 所見:終末感が“硬い”、時間依存で少しずつ延びる、温熱で改善はするが戻りやすい。

  • アプローチ(コツは“腱側を狙う”)

    • ストレッチ+等尺(10秒収縮→30–60秒保持×3)=Golgi腱器官(Ib)抑制で伸びが出やすい。

    • 筋膜リリース/スライド(面でゆっくり)で架橋をほどく。

    • 週4–7日の高頻度・低痛刺激が継続の鍵。

等尺性収縮による筋のストレッチ効果

3) 腱

  • 所見:筋腱移行部に鋭い抵抗、エキセントリックで痛み。

  • アプローチ痛みの出ない角度での等尺軽負荷のエキセントリックへ段階アップ。摩擦が強い局面は回避。

4) 関節包

  • 所見:**副運動(関節モビ)**で硬さ、カプラーパターンに一致(例:肩=外旋>外転>内旋)。

  • 注意:炎症・強い疼痛・動揺性素因では無理に拡げない(防御と不安定化を招く)。

  • アプローチ:痛みが鎮静してからGrade I–IIで鎮痛IIIで伸張へ。軸牽引+滑り方向を正確に。

5) 靱帯

  • 所見:最終域での局所的なストレス痛、ストレステストで緊張感。

  • 備考:生体学的に伸びにくい。長期不動後の固さなら温熱+軽度持続伸張を長期で。


評価のミニ手順(臨床フロー)

  1. レッドフラッグ除外(発赤・熱感・夜間痛増悪・感染/骨折疑い)。

  2. 痛みの質&刺激性(NPRS、24h変動、R1/R2、終末感)。

  3. 表層スライド(皮膚・筋膜)→筋トーン vs 長さ(収縮でゆるむ?時間で伸びる?)

  4. 神経ダイナミクス(放散/しびれが絡むなら先に整える)

  5. 副運動テスト(牽引・滑り)→靱帯ストレス

  6. 保持課題(得た可動性をモーターコントロールで“定着”)


介入アルゴリズム(痛みが強くない前提)

  1. 鎮痛・防御解除:温熱/軽擦/呼吸、等尺→ゆるむ。

  2. 軟部組織:筋膜スライド→ストレッチ+等尺(10s+30–60s×3)。

  3. 関節包低刺激→伸張グレード(方向は解剖どおり)。

  4. 再教育新しい可動域での末端荷重・協調(例:CKCでの軽負荷スクワット/壁プッシュ)。

  5. ホームプログラム1–2日で戻ることがあるので毎日。短時間×高頻度。

禁忌/注意:急性炎症、CRPS疑い、活動性の関節感染、骨折・創部直上、悪性腫瘍部位。迷ったら先に医師へ。


よくある質問(Q&A)

Q1. どのくらい伸ばすのが安全?
A. 痛み2–3/10以下を目安に30–60秒×3セット。翌日の張りが強ければ量を半分に。

Q2. 温める/冷やすは?
A. 慢性拘縮は温熱が有利(血流↑で伸張性↑)。急性炎症期はRICE寄りに。

Q3. モビライゼーションはいつから?
A. 表層の抵抗と痛みが落ちてから。先に皮膚・筋膜・筋トーンを整えるほど少ない刺激で伸びる

Q4. 可動域を維持するコツは?
A. 伸ばした直後にその角度で軽い等尺/荷重課題を入れて**“使って覚えさせる”**こと。

Q5. 装具やスプリントは有効?
A. 夜間スプリント等は戻り防止に有効。短時間×高頻度の自力運動と併用**がベスト。


最終更新:2025-09-21