変形性足関節症のリハビリ治療

変形性足関節症(OA)の概要

  • 成り立ち:外傷後(骨折・重度捻挫)が最多。荷重軸の乱れ(内反/外反)、反復の微小外傷、加齢・肥満も関与。

  • よくある所見:内側裂隙の狭小(内反傾向)、骨棘、こわばり(朝・動き始め)、階段下降・下り坂・長時間歩行で増悪。

  • 検査の目安:荷重位X線(モーティス像)で裂隙不均等とアライメントを評価。理学所見は背屈と外反の低下が典型。


リハビリの設計図(目的と優先順位)

  1. 痛み・腫れのコントロール(炎症鎮静と免荷)

  2. 関節可動域(特に背屈・外反)回復

  3. 荷重線の最適化(装具・靴・インソール)

  4. 筋力・神経筋制御(腓骨筋群・前脛骨筋・下腿三頭筋、+股関節外転/外旋)

  5. バランス・歩行の再教育

  6. 自己管理(負荷調整・体重管理・有酸素)

進め方の合言葉:“痛みは0にせず、翌日リセット”
セッション後の痛み・腫れが24時間以内に元へ戻る範囲で負荷調整。


段階別リハ(目安プログラム)

①高刺激性(炎症/増悪期)

目標:鎮痛・腫脹軽減・優しい可動域

  • 免荷:医師指示に沿って。歩行器/松葉杖で部分荷重

  • 冷却or温冷併用:腫れ強い時は短時間冷却。こわばり優位は温罨法。

  • ROM:座位で背屈・外反の痛みなし往復各10–15回×2–3/日。

  • 等尺性:背屈・外反・底屈・内反、5秒×10回(痛み<3/10)。

  • 足指/足底:ショートフット、グー・パー各10回。

  • 装具ラップ式足関節サポーターロッカー底の靴で負担軽減。

②中刺激性(回復期)

目標:可動域→筋持久力→荷重再獲得

  • 背屈改善

    • 壁ドン・ニーtoウォール(膝タッチ)10回×2–3(左右比較、10cm目標)。

    • タオル/台でカーフストレッチ30秒×3(膝伸展/屈曲位両方)。

  • 筋力

    • 腓骨筋群(外返しチューブ)12–15回×2–3。

    • 前脛骨筋(チューブ背屈)12–15回×2–3。

    • カーフレイズ(両脚→片脚へ)10–15回×2–3。

  • バランス:片脚立ち30秒×3→不安定面へ進捗。

  • 歩行練習短い歩幅+やや速いピッチ、平地から開始。

  • インソール:内反OAは外側ウェッジ、扁平足は内側アーチサポートを試行。

③低刺激性(慢性/維持期)

目標:関節栄養・荷重最適化・機能向上の維持

  • 関節栄養運動:朝夕に背屈・外反のスムーズな反復各20回。

  • 筋力(実用域)

    • 片脚カーフレイズ25回連続を目標。

    • サイドステップ/モンスターバンド(股外転・外旋)20m×2。

    • 段差降り制御(10–15cm)8–10回×2。

  • バランスYバランス・片脚で物拾いなど動的課題。

  • 有酸素:エアロバイク/水中/平地ウォーク20–30分×週3–5

  • 体重管理:-5%でも症状軽減に寄与。ゆるやかな食事調整+活動量アップ。


装具・靴・テーピングの使い分け

  • 硬いヒールカウンター/ロッカー底/適度な前足部屈曲/ねじれにくい

  • インソール

    • 内反OA(内側狭小)→外側ウェッジで内反モーメント低減。

    • 扁平足→内側アーチサポート後足部内側ウェッジで過回内を抑制。

  • ブレース:レースアップ/ヒンジ付AFO、Arizonaブレース(重症~後足部含む関節炎)。

  • テーピング:Low-Dyeで過回内抑制、内反不安定は外反補助方向。


セラピスト向け:徒手・MWMの要点(要禁忌確認)

  • 距腿関節:**後方滑り(Talus PA)**で背屈改善、牽引で痛み軽減。

  • 距骨下関節外反方向のモビライゼーションで可動性回復。

  • 遠位脛腓関節:背屈制限に前後滑り

  • MWM:ベルトで後方タラスグライド+立位ランジ(Mulligan)。
    ※骨折・高度炎症・重度不安定・直後術などは禁忌。


進行・後退の基準

  • 進めて良い:運動後の痛み/腫れが24h以内にベースへ

  • 負荷を戻す:24–48h続く増悪、夜間痛、歩行距離の顕著低下。

  • 受診:急な腫脹・熱発赤、荷重不能、明らかな変形/ぐらつき、しびれ・冷感。


手術が検討される場面(超要約)

  • 鏡視下デブリドマン:骨棘/インピンジ主体の初期。

  • 矯正骨切り(****上位/遠位脛骨など):内反/外反の荷重軸矯正**で関節温存。

  • 関節固定(融合):疼痛制御は強力、可動性は犠牲。

  • 人工足関節置換:可動性温存、骨質・アライメント選択あり。
    → いずれも保存療法を尽くし、日常生活に支障が目安。


歩行補助具を使用した免荷歩行

足関節に炎症や疼痛が認められる場合は、必要に応じて歩行補助具を使用します。体重の「5%」を免荷するだけでも効果が認められます。

方法 免荷
歩行器(つま先のみ接地) 80%
松葉杖 67%
ロフストランド杖 33%
Q杖(四点杖) 30%
T杖(一本杖) 25%

よくある質問(Q&A)

Q1. 背屈が出ないと何が困る?
A. 階段下降や下りで代償が増え、前足部過負荷や膝・腰痛に波及。背屈回復は最優先です。

Q2. 痛みが強い日は運動を休むべき?
A. 可動域の小振り反復・等尺は続けてOK。痛み>5/10の筋トレや長時間歩行は一旦控える。

Q3. どのくらいで効果が出る?
A. 個人差はありますが、2–4週で可動域と歩行耐性の向上を感じることが多いです。

Q4. インソールは市販でいい?
A. 軽症は市販でも有効。内反/外反が強い・後足部のねじれが大きい場合は専門作製がベター。

Q5. 体重はどの程度影響?
A. -5%でも疼痛軽減の報告多数。食事+低衝撃有酸素を併用しましょう。


最終更新:2025-09-29