この記事では、外側広筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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外側広筋の概要
外側広筋は大腿四頭筋の中で最も大きい筋肉であり、その多くの範囲を腸脛靭帯に覆われています。
knee-out toe–inのアライメントにおける膝関節の安定化には、外側広筋が中心的な役割を果たすことになります。
外側広筋や外側膝蓋支帯の柔軟性が低下すると膝関節が不安定になり、膝前面痛(膝蓋大腿関節症)を起こします。
外側広筋は大腿四頭筋腱につながる共同腱部と、膝蓋骨外側ならびに外側膝蓋支帯につながる斜走線維に分けられます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 大腿神経 |
髄節 | L2-4 |
起始 | 共同腱部:大腿骨粗線外側唇、上方は大転子の下部
斜走線維:腸脛靭帯の裏面 |
停止 | 共同腱部:共同腱へ移行後に膝蓋骨を介して脛骨粗面
斜走線維:膝蓋骨外側縁および外側膝蓋支帯 |
栄養血管 | 大腿動脈 |
動作 | 膝関節の伸展、下腿の外旋・外転 |
筋体積 | 514㎤ |
筋線維長 | 8.0㎝ |
速筋:遅筋(%) | 58.5:41.5 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
膝関節伸展 |
1位 | 中間広筋 |
2位 | 外側広筋 |
3位 | 内側広筋 |
4位 | 大腿直筋 |
外側広筋の触診方法
膝関節の終末伸展運動にて、外側広筋から外側膝蓋支帯へと移行する様子を触診で確認しています。
外側広筋は内側広筋よりも線維角が鋭角であり、収縮すると膝蓋骨は上外方に引き付けられるようにして動きます。
大腿の断面図
大腿中央を断面でみた場合、外側広筋は筋間中隔(分厚い深筋膜)によって大腿二頭筋と遮られています。
緊張姿勢(主要姿勢筋が硬い)のヒトでは大腿二頭筋長頭が硬くなっており、それは結果的に隣り合う外側広筋の柔軟性低下も引き起こします。
また、外側広筋の表層は腸脛靭帯(強靭な深筋膜)が張っており、大腿外側の滑走性を確保することは臨床でとても重要となります。
ストレッチ方法
伸張したい側の下肢を股関節外旋・内転位、膝関節屈曲・内旋位とし、足部を体幹の内側に移動させて、そのまま上体を後方に倒していきます。
筋力トレーニング
椅子に腰掛けた状態で、膝関節を伸展させていきます。
足首に重りなどを付けてから実施することで、より効果的にトレーニングしていくことができます。
トリガーポイントと関連痛領域
外側広筋の圧痛点(トリガーポイント)は筋全体にわたって出現する可能性があります。
脚を使った過剰な運動は外側広筋のトリガーポイントを活性化させ、その影響はほとんど常に膝に現れます。
アナトミートレイン
外側広筋はBFL(バック・ファンクショナル・ライン)の筋膜経線上に存在する筋肉で、大殿筋や腸脛靭帯と強く連結しています。
腸脛靭帯や外側広筋は硬くなりやすく、さらに腸骨稜上が硬結しやすいことで非常に動きが制限されやすい傾向にあります。
外側広筋の歩行時の筋活動
外側広筋は遊脚終期(TSw)より活動を開始し、荷重応答期(LR)には遠心性に働きながら膝関節をコントロールしていきます。
関連する疾患
- 膝蓋大腿関節症(膝蓋骨不安定症)
- 膝蓋骨脱臼
- 膝関節拘縮(膝関節屈曲制限)
- 有痛性分裂膝蓋骨
- ジャンパー膝
- オスグッド・シュラッター病 etc.
膝蓋骨不安定症
膝蓋骨を外側に引きつける外側広筋は硬くなりやすい筋肉であり、反対に膝蓋骨を内側に引きつける内側広筋は弱化しやすい筋肉です。
そのため、上の単純X線写真のように膝蓋骨は外上方に偏位しやすい傾向にあり、外側の膝蓋骨と大腿骨の隙間は狭くなりやすいです。
その状態で大腿四頭筋が収縮すると膝蓋骨は正常の軌道から逸脱し、膝蓋骨と大腿骨が外側で擦れて、ギシギシとした軋轢音が聞こえてきます。
摩擦が繰り返されると、磨り減って浮遊した軟骨のかけらが滑膜を刺激して炎症が発生し、膝蓋大腿関節の痛みとして起こります。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨が外側に偏位しやすいことは前述しましたが、重度になると内側膝蓋大腿靭帯が断裂し、膝蓋骨が脱臼してしまうことになります。
そのため、膝蓋骨脱臼のほとんどは外側脱臼であり、発生初期には断裂に伴う炎症所見が認められます。
膝蓋骨脱臼の20〜50%は脱臼を繰り返す反復性脱臼になり、主訴は膝の不安定感に移行していきます。