肘内側痛は ①内側側副靱帯(UCL)損傷、②前腕屈筋群障害(内側上顆炎)、③尺骨神経障害(肘部管症候群) が主因です。機序の整理と鑑別のポイント、実践的な介入法に絞って再編集しました。
① 肘内側側副靱帯(UCL)の損傷
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役割:肘関節の外反(valgus)制動。とくに前束が20–120°屈曲域で主制動。
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好発:投球のレイトコッキング〜加速期の反復で微細損傷→不全断裂〜断裂。
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症状:投球時の内側痛/終盤でのコントロール低下/「抜ける感じ」。
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鑑別テスト:
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Moving Valgus Stress(90→30°へ屈曲中に痛み最大)
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Milking maneuver、外反ストレステスト
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保存療法(多くはまず保存):
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投球休止・段階的復帰プロトコル
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前腕屈筋群(フレクサー‐プロネーター)の筋力強化:橈側/尺側手根屈筋、円回内筋、浅指屈筋。
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肩甲体・股関節の連鎖最適化(体幹回旋・肩外旋可動域の確保)。
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手術適応の目安:完全断裂、競技者で保存無効、反復不安定感。
② 前腕屈筋群の損傷(内側上顆炎を含む)
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機序:上腕骨内側上顆起始部への過負荷(把持・回内・屈曲の反復)。
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動作別に当てる筋:
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前腕回内痛 → 円回内筋
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手関節橈屈痛 → 橈側手根屈筋
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手関節尺屈痛 → 尺側手根屈筋
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手指屈曲痛 → 浅指屈筋
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長掌筋は機能寄与が小さく主因になりにくい。
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介入:炎症期は負荷回避→疼痛減少後に伸張性+遠心トレ、把持や回内のフォーム修正(肘伸展位での過負荷回避、肩甲帯の前傾是正)。
③ 尺骨神経の圧迫(肘部管症候群)
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圧迫ポイント:
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上腕内側(アーケード・オブ・ストラザーズ付近)
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肘部管(尺骨神経溝〜Osborne靱帯の下)
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尺側手根屈筋(FCU)腱弓の深層
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症状:第5指と第4指尺側のしびれ/把持力低下/夜間・肘屈曲で悪化。
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所見:肘部のTinel徴候、肘屈曲テスト、Froment/Wartenberg徴候。
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保存療法:
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夜間は軽度伸展位スプリント、長時間の肘屈曲・卓上での肘支持を回避
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FCU・前腕屈筋群のリラクゼーション、神経グライド
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進行例(筋萎縮・持続感覚障害)や保存無効は減圧術/移行術を検討。
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鑑別の鍵(さっと判別)
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投球時終盤の刺すような内側痛+外反ストレスで再現 → UCL
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把持・回内・手関節屈曲で局所圧痛増悪 → 屈筋腱起始部(内側上顆炎)
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小指・環指尺側のしびれ/夜間・肘屈曲で悪化 → 尺骨神経
リハビリの基本設計
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炎症期は刺激を減らす:投球・高負荷把持の休止、夜間スプリント(神経)。
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滑走とアライメント:組織間の滑走改善、肩甲帯後傾・体幹回旋の再学習。
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局所+全身連鎖:屈筋群の遠心強化と前腕回内‐回外コントロール、下肢・体幹主導で肘の外反負荷を減らす。
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段階的復帰:痛み0–2/10を目安に等尺→等張→遠心→スキル復帰。
よくある質問(Q&A)
Q1. UCLか内側上顆炎か、簡単に判別できますか?
A. Moving valgus stress陽性や投球特異的疼痛はUCL疑い。抵抗下の手関節屈曲/回内で痛みが強いなら屈筋起始部の可能性が高いです。
Q2. 神経症状が出たら運動は中止すべき?
A. しびれ・筋力低下が進行するなら中止し、夜間スプリント+回避肢位を優先。感覚運動が安定後に軽い神経グライドから再開します。
Q3. 投球再開の基準は?
A. 安静時痛0、外反ストレスで疼痛最小、屈筋群・肩外旋筋の左右差<10%、フォームで肘の外反遅れがないことを確認してキャッチボールから。
Q4. 画像検査はいつ必要?
A. 外傷音+急性不安定、4–6週で改善乏しい、神経学的悪化ではMRI/超音波を検討します。
最終更新:2025-10-06


