脛骨高原骨折の概要
脛骨上端(高原:tibial plateau)は**中央が隆起(顆間隆起)**し、外側はほぼ平坦〜やや脆弱、内側はやや凹状という特徴を持ちます。 下肢アライメントは軽度外反(FTA目安:約176°)であり、骨密度は外側が低く、特に前方2/3が脆弱です。そのため、外反強制(valgus)+軸圧が加わると、外側関節面の陥没や骨折を起こしやすい特徴があります。
画像分類としては、Hohlの分類がよく用いられ、頻度としては非転位型(24%)、中央陥没型(26%)、分裂陥没型(26%)などが挙げられます 。特に、脛骨前方部分が陥没している症例よりも、後方部分が陥没した症例のほうが関節運動は障害されやすく、膝関節後外側支持組織(PLS)の癒着・拘縮を確認する必要があります 。
手術適応(目安)
- 絶対適応 :一般に脛骨関節面の陥没が5 mm以上では手術適応となる場合が多いです 。 陥没が5〜10 mmでは、屈曲・外反変形・不安定性の出現と再陥没に注意を払う必要があります 。 楔状骨折で転位がある場合。
- 相対適応 :陥没 2–5 mmで活動性の高い若年〜壮年、不安定性や整復困難が見込まれる症例。
- 保存療法 :転位型や関節面の陥没のないものなど、安定型で良好な整復位が保持できると判断される例は、ギプスや装具固定を用いた保存的治療が選択されます 。
- 主な術式:
- 関節切開法(book-open法) 楔状骨片を観音開きに開いて関節内骨片を軟骨下骨下部の海綿骨と一塊にして挙上整復し、自家骨や人工骨を充填し、スクリューやプレートで固定します 。
- 鏡視下法(開窓法) splitのないcentral depression typeに用いられます。外顆下方の皮質骨を開窓し、鏡視とX線透視を併用し陥没部分を挙上・充填し、スクリューで固定します 。
- 術後成績の判定(Hohlの治療成績判定基準): 術後の成績は、解剖学的評価と機能的評価に分けて評価されます
術後成績の判定(Hohlの治療成績判定基準)
術後の成績は、解剖学的評価と機能的評価に分けて評価されます。
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判定
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解剖学評価の基準
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機能的評価の基準
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優
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5°以内の正常外反度、転位が5 mm以下に整復、関節症変化なし
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膝関節の完全伸展が可能、120°以上の可動域、異常な外転位揺れがない、筋力と持久力は正常、疼痛はあっても軽度
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良
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5°を超える外反変形、最小限の関節症変化
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膝関節伸展障害10°、過度な側方不安定性あり、毎日軽度の疼痛、全可動域90°、筋力低下または易疲労性あり
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可
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10°を超える外反変形、中等度の関節症変化、骨折が整復されていない
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膝関節の伸展障害が10°を超す、可動域75°、通常の行動で不快感あり、通常の側方不安定性あり
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不可
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中等度または重度の関節症変化、骨折が整復されていない、10°を超える外反変形
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有効な可動域のないもの(75°未満)、就労不可能、すべての行動に疼痛を伴う、過度の側方不安定性あり
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術後リハビリの流れ(標準目安))
①術前
深部静脈血栓症の予防や術後の機能早期回復のために、痛みのない範囲で大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮(等尺性運動)や足趾・足関節の底背屈運動を行わせます 。
②Ⅰ期:術後〜約6週
- 装具:通常は外固定なし(術者方針や骨折の程度に従う)。
- 浮腫・疼痛管理:早期炎症沈静化と関節内圧軽減を目的とした患肢挙上位でのアイシングや、弾性包帯とパッドを併用した圧迫による浮腫腫脹管理を行います 。
- 運動療法:翌日よりパテラセッティングや足趾・足関節の底背屈運動を開始し、自動介助・自動運動によるROM運動を進めます 。大腿四頭筋や膝窩筋などの反復収縮によるスパズム排除も重要です 。
- 歩行:両松葉杖による完全免荷(NWB) 。
③Ⅱ期:術後6–12週
- ROM目標:屈曲角度を拡大させていきますが、膝関節を90°以上屈曲していく際には脛骨顆部後方で回旋運動を伴う「roll back」が起こるため、再陥没に注意しながら慎重にROM訓練を行う必要があります 。
- 荷重・歩行:X線所見により骨折部の状態を確認しながら進めます 。段階的荷重の目安として、**術後6週で1/6部分荷重(PWB)、7週で1/3 PWB、8週で1/2 PWB、9週で2/3 PWB、10週で全荷重(FWB)**といったスケジュールで進行します 。
④Ⅲ期:術後12週以降
- 持久・機能:可動制限がある場合、積極的なROM運動を指導し、階段昇降(90°)や自転車こぎ(120°)以上の屈曲角度を必要とすることを念頭に動機付けます 。
- スポーツ:骨癒合、疼痛、腫脹の推移をみて個別調整し、ジョギングなどを許可していきます。
重点トピック
1. 患部外トレーニングと軟部組織へのアプローチ
内固定は局所の血流を下げやすいため、患部に影響しない足趾・足関節運動を早期から行い、循環促進と萎縮予防を図ります 。また、腸脛靭帯の滑走性改善や、膝蓋下脂肪体を中心とした膝蓋骨下方支持組織の引き出し操作などを行い、拘縮を予防します 。
2. 歩行補助具と免荷の割合
免荷期間中は、平行棒や体重計を用いて正確な荷重感覚を獲得します。使用する歩行補助具ごとの免荷割合の目安は以下の通りです 。
- 歩行器:免荷約80%(つま先のみを接地した場合など)
- 松葉杖(両):免荷約67%
- ロフストランド杖:免荷約33%
- Q杖(四点杖):免荷約30%
- T杖(一本杖):免荷約25%
3. 後方重心の修正と関節の保護
足関節背屈制限や足部内反があると、踵寄り荷重と脛骨内旋を誘発し、外側高原へのストレスが増大します。足関節の可動域確保とアライメントの是正により外側ストレスを軽減させることが再発や関節症予防に繋がります。
よくある質問(Q&A)
Q. どのくらいの陥没で手術が必要ですか?
A. 一般に5 mm以上の陥没は手術適応となることが多く、5〜10 mmの陥没では屈曲・外反変形や不安定性、再陥没のリスクが高まるため注意が必要です 。2–5 mmの場合は、年齢や活動性などを考慮して相対的に適応を検討します。
Q. いつから体重をかけられますか?
A. 一般的な目安としては、術後6週から1/6荷重で開始し、7週で1/3、8週で1/2と段階的に増やし、10週目頃に全荷重(FWB)へ移行します 。ただし、必ずX線所見で骨癒合の状態を確認したうえで慎重に決定されます 。
Q. リハビリで最優先すべきことは何ですか?
A. 早期からのアイシングや圧迫による「浮腫・腫脹の管理」 と、患部外トレーニングによる「循環・筋萎縮予防」 です。また、可動域訓練では膝関節伸展の確保とともに、屈曲90°以降の関節の「roll back機構」による力学的ストレス(再陥没リスク)に配慮した慎重なアプローチが求められます 。
Q. 後遺症(外反変形や可動域制限)を避けるには?
A. 適切な整復・固定が大前提です。リハビリにおいては、過負荷を避けた段階的荷重と、足部・足関節を含めた下肢アライメントの是正が鍵です。また、外側高原の後方部分の骨折では、膝関節後外側支持組織(PLS)が癒着・拘縮しやすいため 、この部位の柔軟性や滑走性を維持する介入が重要です 。
Q. スポーツ復帰の目安は?
A. ジョギングなどの軽い負荷から開始し、階段昇降や自転車こぎに必要な可動域(120°以上)の獲得 、痛みや腫脹の有無、筋力の左右差などを客観的指標として総合的に判断します。
最終更新:2026-06-30



