この記事では、長内転筋(adductor longus)に関する充実したデータを閲覧できます。
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長内転筋の概要
長内転筋は恥骨筋の下部を並走しています。
語名はadduco(~へ導く,引く)とlong(長い)から構成されています。
大内転筋の前側に位置しており、起始部が骨盤の前側にあるため、股関節の屈曲にも貢献します。
股関節屈曲60度を境目に屈曲作用が伸展作用に変換する特殊な筋で、鼠径部の痛みの原因として最も多い筋肉です。
基本データ
支配神経 | 閉鎖神経の前枝 |
髄節 | L2-4 |
起始 | 腸骨上枝(恥骨結節の下方) |
停止 | 大腿骨粗線の内側唇中部の1/3の範囲 |
栄養血管 | 閉鎖動脈 |
動作 | 股関節の内転
股関節の屈曲(※股関節屈曲90度で伸展作用に変化) 股関節外転位での内旋 |
筋体積 | 188㎤ |
筋線維長 | 8.3㎝ |
速筋:遅筋(%) | 50.0:50.0 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
股関節内転 |
1位 | 大内転筋 |
2位 | 大殿筋(下部) |
3位 | 長内転筋 |
4位 | 短内転筋 |
長内転筋の触診方法
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写真では、股関節を外転した状態から屈曲・内転運動を行ってもらい、抵抗をかけることで隆起した長内転筋を触診しています。
大腿の断面図
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大腿中央を断面でみた場合、大内転筋と長内転筋は薄筋とともに内側区画に配置されていることがわかります。
ストレッチ方法
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胡座にて両側底面を合わせ、両手で両側部を把持し、 体幹を前屈しながら両股関節外転を増大していきます。
筋力トレーニング
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足首にチューブを巻き、下肢を内転させていきます。代償運動が入らないように骨盤や下肢の回旋に注意しながら実施してください。
マッサージ方法
患者に背臥位をとっていただき、術者は母指を長内転筋の起始部である恥骨結節の下に置いて、組織をしっかりと押圧しながら停止部まで滑らせます。
マッサージと併行して硬結部がないかをチェックしていき、見つける都度に軽い持続圧迫を加えてリリースします。
短内転筋は長内転筋の深部に位置していますので、長内転筋を緩めたあとにさらに深く押圧し、走行をイメージしながら圧を加えていきます。
圧痛点と関連痛領域
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長内転筋は股関節内転に作用するため、内方運動配列の筋膜に属します。
圧痛点(トリガーポイント)は起始付近と筋腹に出現し、関連痛は股関節内方と膝関節内方に出現します。
アナトミートレイン
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長内転筋はFFL(フロント・ファンクショナル・ライン)の筋膜経線につながる筋肉です。
ファンクショナルとは機能的という意味であり、主に運動時に四肢の複合体を安定化する作用を持ちます。
例えば、やり投げや野球の投球動作などのように、下肢や股関節からのパワーを上司につなげていく流れを作ります。
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また、DFL(ディープ・フロント・ライン)といった深部の筋膜ラインにも属しており、大内転筋に問題が起こると深部骨盤に痛みが起こります。
歩行時の筋活動
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長内転筋は立脚終期(TSt)から遊脚初期(ISw)にかけて活動しますが、これは腸骨筋にて下肢を振り出す際に方向を定める作用があるからです。
この役割は大内転筋の前側(内転筋結節部)や短内転筋も同様に担っています。
スカルパ三角を構成する筋肉
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縫工筋と鼡径靭帯と長内転筋の3つでスカルパ三角(大腿三角)を構成しており、中には大腿動静脈と大腿神経が通過しています。
怪我などで止血をする場合はスカルパ三角を強く圧迫することにより、大腿動脈の血流を止めて大量出血を防ぐことができます。