首から指先にかけて痛みがある場合に、医師のほとんどは「頚椎症」と診断しますが、実際に徒手検査をしてみると症状が出ない。
頚椎の伸展や側屈で症状は増悪しないし、MRI画像でも神経の圧迫はない、またはあっても神経検査と合致しない。
その時点で頚椎の問題以外を考えないといけないわけですが、診断名のみでリハビリをしていたら原因がわからないままです。
原因が特定できていないわけですから、もちろん治るわけもなく、自然治癒していくのを待つしかない状態になります。
首には問題がなく、肩から指先に痛みがある場合は「肩の問題」と診断されやすいですが、こちらも指先に痛みが出る理由が説明できません。
では何が問題かというと、かなりの確率で筋膜が関係しています。
筋膜が原因の場合は、「親指が痛い」といったように特定の指に問題を訴え、さらに一定の場所で圧痛を認めます。
以下に、指ごとにどこの筋膜に問題があるのか、そしてどこに圧痛点(硬結部位)があるのかを解説していきます。
親指に痛みがある場合
親指(母指)に痛みがある場合は、前方筋膜の問題が考えられます。
左側の黄色い●が痛みを感じるポイントで、右側の赤い●が圧痛点であり、治療では主に圧痛点をほぐすことが必要になります。
筋膜は「筋肉の表層を繋ぐ膜」であり、前方筋膜は上肢を屈曲させる方向に働く複数の筋肉で構成されています。
例えばですが、肩から親指の痛みがある患者に対して、橈側手根屈筋や長母指屈筋を圧迫すると強い痛みを訴えることがあります。
もしもこれが頚椎や肩関節での神経圧迫が問題であるなら、赤い●の部分に圧痛は起こらないはずです。
実際に触れてみると筋膜の滑りが悪いことを感じられるので、慣れてくるとそれほど検査も難しいものではありません。
具体的な治療方法については、別記事の「筋膜マニピュレーションの方法と効果について解説」に詳しく載せています。
示指に痛みがある場合
示指(第2指)に痛みがある場合は、外方筋膜の問題が考えられます。
外方筋膜は上肢を外転させる方向に働く筋肉で構成されており、肘関節に関しては側方安定性を担う長・短橈側手根伸筋が重要です。
中指に痛みがある場合
中指(第3指)に痛みがある場合は、内旋筋膜の問題が考えられます。
内旋筋膜は、前方筋膜と内方筋膜の間に位置しており、2つの筋膜の複合的な動きになります。
内旋筋膜は上肢を内旋させる方向に働く筋肉で構成されており、手掌では中指の屈曲を担う浅指屈筋が関与しています。
薬指に痛みがある場合
薬指(第4指)に痛みがある場合は、外旋筋膜の問題が考えられます。
外旋筋膜は、後方筋膜と外方筋膜の間に位置しており、2つの筋膜の複合的な動きになります。
外旋筋膜は上肢を外旋させる方向に働く筋肉で構成されており、手掌では薬指の伸展を担う総指伸筋が関与しています。
小指背側に痛みがある場合
小指(第5指)の背側に痛みがある場合は、後方筋膜の問題が考えられます。
後方筋膜は上肢を伸展させる方向に働く複数の筋肉で構成されており、肩関節後方では広背筋が関与しています。
小指腹側に痛みがある場合
小指(第5指)の腹側に痛みがある場合は、内方筋膜の問題が考えられます。
内方筋膜は上肢を内転させる方向に働く筋肉で構成されており、肘関節に関しては側方安定性を担う尺側手根屈筋が重要です。
参考にした書籍
この記事では本当にざっくりと関連痛が出る場所と筋膜が硬結する位置を載せましたが、詳細は書籍を読むほうが絶対にいいです。
筋膜を知ると疼痛の原因をさらに絞ることができるようになり、治療効果が向上することは間違いありません。
いろいろな技術書を読んできましたが、筋膜マニピュレーションだけは絶対に覚えておいたほうがいい手技なので、是非とも一読してみてください。