体位ドレナージ(排痰法)の方法をわかりやすく解説

専門で診ていない限りは、理学療法士ではほとんど実施することのない体位ドレナージについて、超わかりやすく方法について説明していきます。

体位ドレナージの概要

体位ドレナージとは、身体の向き(体位)を変えることで痰を排出(ドレナージ)する方法です。今から100年以上前にエワルトによって報告されました。

その原理として、体位を変えることで重力を利用して、痰を中央の気管に移動させていきます。簡単に書くと、ビー玉を転がして穴に落とすような感覚です。

痰の場所さえわかったら体位は簡単にわかる

ビー玉落としの要領で考えたらとても簡単で、下図の赤色の部分に痰がある場合は、上半身を起こして痰を下に落とします。黄色の場合は左側臥位をとり、中心に痰を落とします。

青色の場合は、逆立ちはさすがに無理なので、ベッドを傾斜させて肺下部が上になるようして痰を落とします。

あとは腹側にあるなら仰向け、背側にあるならうつ伏せとします。たったこれだけです。めっちゃ簡単ですね。

肺1

豆知識として、痰が下葉(青色)にある場合はベッドの傾斜が必要ですが、難しい場合は側臥位にするだけでも排出がしやすくなるので、できる限り体位を整えるようにすることが推奨されます。

痰ができる原因は主に感染症

通常、気道の粘膜は少量の気道分泌物によって表面を覆われています。この分泌物は、無意識のうちに飲み込まれているため、痰のように排出されることはありません。

しかし、ウイルスや細菌などによって感染が起きると増加し、死んだウイルスや細菌を含んだ粘り気の強い分泌物となります。

これが痰です。飲み込むことも可能ですが、通常は気持ち悪いので吐き出すようにし、この行為を喀痰(痰を吐く)と呼びます。

痰の色から原因を分析

痰ができる原因には様々なものがありますが、これらの原因はなんと痰の色を見ることで分析することができます。ちょっと汚いですけど、痰の色は必ず見るようにしてください。

原因 特徴
白黄色~淡黄色 急性咽頭炎 最も多い。黄色はウイルスの死滅した色。細菌性感染症を示唆
急性気管支炎
急性肺炎
緑色 びまん性汎細気管支炎 緑は緑膿菌などが産出する色素による色。古い膿を含む
慢性気管支炎
気管支拡張症の増悪
さび色 肺炎球菌性肺炎 膿に少量の血液が混入してみえる色
肺腫瘍
肺化膿症
透明~白色(粘液性) 非細菌性感染症 ウィルス性など非細菌性の感染が多い。杯細胞や気管支腺などからの分泌過剰が原因
アレルギー性気管支炎
COPD
透明~白色(漿液性) 肺胞上皮癌 毛細血管の透過性亢進
気管支喘息
ピンク色 肺水腫 肺循環のうっ血
茶色、暗赤色 肺がん 血と痰が混ざったもの。肺血管の破綻による気道内への出血
気管支拡張症
肺結核症
肺真菌症
肺梗塞
Goodpasture症候群
赤色 肺出血 いわゆる喀血。1回の喀出血液量が2mL以上
気管大動脈瘻

痰がある場所を特定する方法

詳しい方法は、呼吸器疾患の胸部診察方法の記事に譲りますが、打診時には濁音(水分の貯留がある)があり、触診時には胸郭運動時に振動が感じ取れます。

聴診時には、いびき音(ゴーゴー)や水泡音(ブツブツ)といった音が聞こえてきます。これらを目印として、痰の位置を特定しながら体位を決定していきます。

体位ドレナージの禁忌

ひとつ注意しておかなければならないのは、喀血時だけは体位ドレナージを実施しないことです。

痰ではなく血液が中央の気管になだれ込んでしまった場合、窒息してしまうリスクがあるからです。そのため、喀血時だけは例外的に病変を下にする必要があります。

大量喀血が起きた場合の対処法

大量喀血で死んでしまう原因は、失血死ではなく窒息死です。なので、血液が気管支に入ることをまずは防がなくてはなりません。

右肺から出血している場合は、右肺を下側にして気管支に入ることをまずは防ぎ、左肺の活動だけ確保するようにします。緊急時にこういう発想で対応できると格好いいですよね。

役立つ資料(おまけ)

体位排痰法a


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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