大腿四頭筋の筋トレで膝関節を伸ばす運動の効果

変形性膝関節症の患者に対して在宅訓練を指導する際に、パテラセッティングと膝関節の伸展運動は鉄板だと思います。

しかしながら、以前の記事にも書いたように、ただやみくもに運動を実施してもらっても全く効果は期待できません。

 

当たり前の話ですが、パテラセッティングなんて筋トレには不向きですし、そもそも膝蓋骨の動きが乏しい状態で実施しても無意味です。

理学療法士などが徒手的に可動性を確保した後に、その動きを維持する目的で行わないことには進歩が望めません。

この考え方は膝関節の伸展運動も同様であり、伸展制限がある状態でいくら運動を実施しても痛みが改善することはないでしょう。

それでは、具体的にどのような手順を踏んだうえで行うとよいかについて、順を追って説明していきます。

まずは伸展制限を起こしている因子を取り除き、膝関節が十分に伸びる状態を作ることが必要です。

制限因子は皮膚や筋肉、膝蓋下脂肪体、膝蓋上組織などが考えられますが、最も多いのは膝蓋下脂肪体です。

膝関節が伸展すると膝蓋下脂肪体は膝蓋骨の前下方に押し出されますが、滑走不全が生じていると移動することができません。

そうすると膝関節に伸展制限が起こることになり、伸展を強制するとインピンジメントを起こして膝蓋骨下方に痛みを訴えます。

例えばですが、この状態のまま膝関節を強制的に伸展ストレッチしていくと、膝蓋下脂肪体はさらに損傷して硬くなるといった悪循環に陥ります。

それだけは避けないといけないので、まずは膝蓋下脂肪体の滑走性を高めることが必要となります。

方法としては、膝蓋骨の周囲に存在する支帯をほぐしていき、次に膝蓋下脂肪体をマッサージしながら柔軟性を高めていきます。

十分に動きが出てきたら、指にて膝蓋骨を下方に引き下げた状態からのクワドセッティングを反復し、膝蓋骨の動きを引き出していきます。

ここまでの治療がすんだら、膝関節の伸展ストレッチを再度実施し、膝関節の前下方に痛みが出ないことを確認します。

適した反応としては、膝裏が痛くなることで、これは膝関節の後方関節包が伸ばされている状態なので、そのままストレッチして大丈夫です。

背臥位で実施する場合は、膝蓋骨を上方からベッドに押し付けるように力を加えて、5秒ほど押しては緩める動作を繰り返します。

これで膝関節の伸展制限はかなり改善されますので、ここからはパテラセッティングや膝関節の伸展運動を積極的に行なっていきます。

パテラセッティングに関しては、膝蓋骨の可動性がまだ足りずに、途中で引っかかりを起こして運動が不十分となる場合も多いです。

そのような患者には椅子などに腰掛けた状態からの伸展運動が最適であり、先ほどの改善させた可動域まで伸展を引き出せるように指導します。

そこからは在宅訓練としても積極的に行うようにし、獲得した可動域を保てるようにすることが重要となってきます。

ここまでの流れを一切せずに伸展運動をしたとしても、可動性がないので筋肉の収縮は不十分ですし、関節可動域も向上しません。

適切な運動を実施するためには、まずは関節周囲を適切な状態に持っていくことが必要不可欠です。

ただやみくもに運動を実施してもらっても全く効果は期待できません。

そのことを肝に銘じながら在宅訓練を指導するように心がけてみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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