大菱形筋の概要
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**大菱形筋(rhomboid major)**は T1–T4 棘突起から起こり、肩甲骨内側縁の下部に付きます。
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役割は肩甲骨の内転(内寄せ)・下方回旋・軽い挙上。とくに下方回旋の主力です。
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菱形筋は大・小に分けますが境界は曖昧で、約1割強で連続し一塊になっています(頸椎起始=小、胸椎起始=大が目安)。
※ 図は僧帽筋を取り除いた状態
基本データ
| 項目 | 内容 |
| 支配神経 | 肩甲背神経 |
| 髄節 | C4–C5(臨床的にはC5優位) |
| 起始 | T2–T5棘突起(※文献によりT1–T4表記もあり) |
| 停止 | 肩甲骨内側縁下部(肩甲棘下〜下角近傍) |
| 栄養血管 | 肩甲背動脈 |
| 動作 | 肩甲骨内転・下方回旋・軽い挙上 |
| 筋体積 | 118㎤ |
| 筋線維長 | 17.8㎝ |
| 速筋:遅筋(%) | 55.4:44.6 |
※筋体積と筋線維長は小菱形筋まで含んだ数値です。
運動貢献度(目安)
| 貢献度 | 肩甲骨内転 | 肩甲骨下方回旋 | 肩甲骨挙上 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 僧帽筋(中部) | 大菱形筋 | 僧帽筋(上部) |
| 2位 | 大菱形筋 | 小菱形筋 | 肩甲挙筋 |
| 3位 | 小菱形筋 | 小胸筋 | 大菱形筋 |
| 4位 | — | — | 小菱形筋 |
臨床Tip:肩甲骨が前外方(外転)に流れやすい症例は、大/小菱形筋+僧帽筋中部の持久力低下が多く、肩甲骨内転・下方回旋の制御が安定化の鍵。

大菱形筋の触診方法

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腹臥位で上肢を背中へ回す(内旋・伸展)→肩甲骨が浮き、内側縁が触れやすい。
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肩甲棘の下方〜下角のやや上の内側縁へ指腹を内側→外側に押し込むと、僧帽筋の深層にある索状の大菱形筋に触れます。
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収縮を確認したい時は、患者に肩甲骨を背骨へ寄せる動きを軽く入れてもらう。
ストレッチ方法

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方法:立位または座位で両腕をクロス。伸ばしたい側の腕を水平内転しつつ、肩甲骨を**外転(前へ)**へ誘導。
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感覚:肩甲骨内側縁の奥に伸び感。痛みは3/10以内。
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目安:20–30秒 × 3–4回/日1–2セット。
筋力トレーニング

① プローンY–T(自重)
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ベッド端でうつ伏せ。胸を軽く浮かせ、T(水平外転)で肩甲骨を内転。反り過ぎ・肩すくめに注意。
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8–12回 × 2–3セット。
② ダンベルex
- 手首に負荷(軽量)を付け壁に手を置く。体幹前傾から肩を後方へ引き上げる。
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「肘を引く」より肩甲骨を寄せる意識。
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10–15回 × 2–3セット。
NG例:肩がすくむ/首で代償/腰の過伸展。→負荷軽減と可動域の見直しを。
トリガーポイント(TP)

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主訴:肩甲骨内側縁の線状の鈍痛/圧痛、就寝中や朝の強いこわばり。
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誘因:長時間の肩甲骨寄せ姿勢(良い姿勢の固定)、投球・ボート漕ぎ等の反復牽引、大胸筋短縮による伸張性過負荷(エキセン)。
関連する症状・疾患
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胸郭出口症候群(牽引型):肩甲骨の胸郭固定が弱いと神経・血管束に牽引ストレスが増えやすい。菱形筋・僧帽筋中部の持久力強化が有用。
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肩関節不安定症/周囲炎:肩甲骨の内外転・回旋の協調を整えると上肢症状が軽減するケース。
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巻き肩・猫背:前側(小胸筋・上部僧帽)優位、後側(菱形筋・中部僧帽)不活性のアンバランスに注意。
よくある質問(Q&A)
Q. 菱形筋と僧帽筋中部、どちらを優先して鍛える?
A. 多くの人で両方が弱いのでセットで。まずは肩甲骨をすくめずに内転できるかを習得→負荷を段階的に。
Q. ストレッチと筋トレはどちらが先?
A. 過緊張/圧痛が強いときはストレッチ or 軽いリリース → 低負荷トレ。可動が出たら持久力を優先。
最終更新:2025-10-20

