脳葉の機能マップ(要点だけ)
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前頭葉
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一次運動野(BA4):随意運動の最上位中枢(前頭回・中心前回)。
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ブローカ野(BA44/45):左下前頭回(言語産出・構文化)。
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前頭前野:実行機能(思考・判断・計画・注意の制御)。
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側頭葉
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一次聴覚野(BA41/42:ヘシュル回)。
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ウェルニッケ野(BA22後部):言語理解。
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内側側頭:海馬(記憶形成)、扁桃体(情動)。
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頭頂葉
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一次体性感覚野(BA1–3:中心後回)。
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縁上回(BA40)・角回(BA39):音韻処理、読字・書字、語の統合など。
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後頭葉
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一次視覚野(BA17)、視覚連合野(BA18/19)。
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※番号はブロードマンの領野。言語の左右差は例外もありますが、右利きの多くは左半球優位です。
失語症モデルと回路の見取り図(歴史的枠組み)

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入力(聴覚)→一次聴覚野→ウェルニッケ野(意味理解)→
前頭前野などの意味ネットワーク→ブローカ野(言語産出)→発話。 -
弓状束(ウェルニッケ↔ブローカの白質路)が復唱に重要。
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近年は「概念(意味)中枢=一点」ではなく、前頭‐側頭‐頭頂に分散するネットワークとして理解します。
失語タイプ別の臨床像(ベッドサイドで使える早見表)
| タイプ | 発語 | 復唱 | 理解 | 病巣のめやす |
|---|---|---|---|---|
| ブローカ失語 | 非流暢(努力的・電文体) | 不良 | 比較的良好 | 左下前頭回(BA44/45) |
| ウェルニッケ失語 | 流暢(内容乏・錯語) | 不良 | 不良 | 左上側頭回後部(BA22) |
| 伝導失語 | 流暢 | 不良(復唱のみ目立つ) | 良好 | 弓状束/縁上回周辺 |
| 超皮質性運動失語 | 非流暢 | 良好 | 良好 | ブローカ周辺の前頭葉外側(言語野は温存) |
| 超皮質性感覚失語 | 流暢 | 良好 | 不良 | ウェルニッケ周辺後部連合野(言語野は温存) |
| 混合型超皮質性失語 | 非流暢 | 良好 | 不良 | 言語野が島状に孤立(広範囲分水嶺) |
| 全失語 | 非流暢 | 不良 | 不良 | 左半球広範囲(シルビウス周囲) |
| 健忘失語 | 流暢 | 良好 | 良好(喚語困難) | 角回・側頭極など多様 |
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伝導失語:理解は保たれるのに復唱だけ破綻が典型。
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超皮質性群:復唱が保たれるのが最大のヒント(言語中枢自体は温存し“周辺”で孤立)。
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健忘失語:物の名前が出ない→迂言(回り言葉)でしのぐ。
よくある落とし穴/鑑別ポイント
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失語 vs 構音障害(運動性発話障害)
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失語:言語機能そのものの障害(命名・復唱・理解)。
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構音障害:発音運動の障害(聴理解・語彙は保たれる)。
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半球優位性:左利き・両利きでは右半球優位/両側表現もありうる。
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注意・半側空間無視・失行/失認が重なると理解/表出の低下と誤認しやすい。
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せん妄・うつ・聴力障害は**“理解不良”に見える偽陰性**の要因。
ベッドサイドの簡便スクリーニング例
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自発話(会話・描写):流暢性と内容。
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理解:1段階→2段階命令(「右手でボールを取り、赤い箱に入れて」など)。
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復唱:単語→文(長い文ほど弓状束の機能を反映)。
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命名:実物/絵カード、カテゴリー命名(動物名をできるだけ多く)。
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読み・書き:単語→文。
→ “流暢性・復唱・理解”の3軸で、上表に当てはめるとタイプの見当がつきます。
Q&A
Q1. 失語はリハビリで良くなりますか?
A. 個人差はありますが、早期からの言語療法で改善が期待できます。タイプと重症度、合併症(注意障害・失行など)が転帰に影響します。
Q2. 超皮質性失語で復唱が保たれるのはなぜ?
A. ブローカ—ウェルニッケ—一次聴覚野を結ぶ回路が保たれ、周囲が**“孤立”**するため、外部から入った音声をそのままエコーのように出力しやすいからです。
Q3. 伝導失語とウェルニッケ失語はどう見分ける?
A. 両者とも流暢ですが、伝導失語は理解が保たれ“復唱だけ”著明に低下。ウェルニッケは理解も低下し、錯語が多く内容が通りません。
Q4. 失語と認知症の言語障害は違う?
A. 一部重なりますが、失語は脳血管障害で急性発症が多く、言語領域の局在性が明瞭。認知症は徐々に進行し、記憶・遂行機能など広範に障害されやすいです。
最終更新:2025-09-20
