手関節橈側の痛みの原因とリハビリ治療

① 狭窄性腱鞘炎(ド・ケルバン病)

狭窄性腱鞘炎

病態
長母指外転筋(APL)と短母指伸筋(EPB)が通る伸筋支帯第1区画で、腱と腱鞘の摩擦→炎症。中年女性や育児中の方に多い。

主症状
橈側手関節〜母指根元の痛み・腫れ・引っかかり感。ペットボトルの開栓や赤ちゃんの抱き上げで増悪。

鑑別に役立つ所見

  • Finkelstein/Eichhoffテスト:母指を握り込み小指側へ手関節を曲げると強い痛み。

  • 局所圧痛:橈骨茎状突起直上。

  • 神経症状(しびれ)が主なら別疾患を疑う。

対応

  • 急性期:安静・アイシング・母指スパイカ型の装具(外転・伸展を制限)。

  • 回復期:APL/EPBのやさしいストレッチ滑走訓練、前腕回内外・手関節の共同運動を追加。

  • 生活指導:抱っこの前腕回外+体幹近位で支える、スマホの片手長時間操作を減らす

  • 難治例:注射・腱鞘切開などを検討。


② 舟状骨骨折(スカフォイド骨折)

舟状骨骨折

病態
転倒時の手関節背屈強制で好発。手根骨で最も骨折が多い。血流が乏しく偽関節化しやすい

要注意ポイント(見逃しやすい!)

  • 受傷直後はX線で骨折線が不明瞭なことがある(1–2週後に所見が明瞭化)。

  • 解剖学的タバコ窩(スナッフボックス)圧痛、舟状骨結節圧痛、軸圧痛があれば骨折疑いで固定優先

対応

  • 保存:母指〜前腕を含む長母指外転位のギプス(しばしば肘下/時に肘上)、目安8–12週

  • 手術(スクリュー固定)後:装具固定+可動域は術後6週以降が一般的。

  • リハビリ:固定中は指・肘・肩の可動域維持、解除後に手関節の屈伸・回旋の段階的回復。過負荷は厳禁。


③ 母指CM関節症(母指付け根の変形性関節症)

母指CM関節症

病態
母指CM(第1手根中手)関節は可動性が高く不安定化しやすい。把持・ひねり動作の反復ストレスや伸展ストレスで軟骨変性。

主症状
ペットボトル開栓・洗濯バサミ・つまみ動作での付け根痛、朝のこわばり、進行で変形・握力低下。

鑑別に役立つ所見

  • Grindテスト(母指中手骨を圧迫回旋)で深部痛

  • ド・ケルバン病は橈側トンネル上の表在痛が中心—痛みの位置で見分ける。

対応

  • 安定化が要:**母指CM装具(スパイカタイプ)**で3か月程度を目安に痛みの鎮静化を優先。

  • 筋・軟部組織:母趾内転筋/母指球/小指球過緊張を緩める(軟部リリース・ストレッチ)。

  • 使い方の見直し:母指を反らせて強くつまむ癖を減らす、太めのグリップを使用。

  • 進行例:注射や手術(靱帯再建・関節形成術等)を検討。


すぐに役立つセルフケア共通編

  • 装具・テーピングで“痛い方向”の運動を一時的に減らす

  • 厚め・太めの持ち手(ペン・包丁・歯ブラシ・開栓補助リング)に変更。

  • マウスは親指の外転・伸展が少ない形状を選択。

  • 痛みの10段階で3以下を基準に運動量を調整。


よくある質問(Q&A)

Q1. ド・ケルバン病は温める?冷やす?
A. 急性期の熱感・腫れが強い間は冷却+安静。落ち着いたら温めて血流改善+軽いストレッチが有効です。

Q2. 舟状骨骨折かもしれません。レントゲンが正常でも大丈夫?
A. **正常でも骨折を否定できません。スナッフボックス圧痛があれば固定して再撮影(1–2週後)**が安全です。

Q3. 母指CM装具はどのくらい付ける?
A. 痛みが強い時期は日中長め+就寝時は症状次第3か月前後で段階的に装具時間を減らし、安定化エクササイズへ移行します。

Q4. 仕事や育児で安静が難しい…
A. 装具+動作の工夫で“痛みの出る角度”を避けましょう。抱っこは前腕回外・体幹近位で、家事は両手で分散を意識。

Q5. いつ専門医を受診すべき?
A. 外傷後の強い橈側痛・腫れ・握力低下スナッフボックス圧痛夜間痛が持続装具で2–3週改善なしは受診の目安です。


最終更新:2025-10-05