殿部(お尻)の痛みの原因とリハビリ治療

① 仙腸関節障害(SIJ)

殿部の痛み|仙腸関節障害

要点:仙骨と腸骨からなる平面関節。妊娠・産後などで靱帯弛緩→微小不安定+炎症
症状:PSIS周囲の分節性の局所痛。患側荷重・立ち上がり・寝返りで増悪。
鑑別:腰椎由来は中央〜びまん、SIJは片側に限局しやすい。
評価:Patrick(FABER)、Gaenslen、圧痛(PSISや仙結節靱帯)。
治療

  • 痛み相:活動調整+ベルト(必要例)で安定化。

  • 機能相:股関節伸展・内旋の可動域回復(腸腰筋・前関節包)、腰多裂筋の促通、骨盤前傾保持の運動学習。


② 梨状筋症候群

殿部の痛み:梨状筋症候群

要点:梨状筋の過緊張・浮腫で坐骨神経を二次的に圧迫
症状:殿部深部痛〜大腿後外側への放散。長座・外旋位・坂道で増悪。
評価:FAIRテスト(屈曲・内転・内旋)で再現、梨状筋の限局圧痛。腰椎神経根症状の除外も。
治療

  • 持続圧迫リリース温和なストレッチ股関節外旋筋の等尺→等張

  • 自主:“テニスボールで殿部ポイント圧”は1点30–60秒、痛気持ち良い強度で。


③ 深層外旋筋群の伸張由来疼痛(虚血性)

殿部の痛みの原因|股関節深層外旋六筋

要点:内向き膝・股内旋位が持続(例:股OA、内転拘縮)→外旋筋群(梨状筋・内外閉鎖筋・双子筋・方形筋)の持続伸張→血流低下痛。
症状:大転子後上〜坐骨周囲の鈍痛/張り。片脚立位や長歩行で悪化。
評価:股関節内旋過多/外旋可動域低下、外旋筋の圧痛・筋短縮テスト。
治療

  • 内転拘縮の解消(関節モビライゼーション、内転筋のリリース)。

  • 外旋可動の回復+外転筋・外旋筋の協調

  • 立脚時の骨盤水平保持内転モーメント低減の動作指導。


④ 上殿皮神経障害(SCN絞扼)

殿部の痛みの原因|上殿皮神経麻痺

要点:胸腰筋膜を貫通する感覚枝が筋膜の短縮・癒着で絞扼。画像で映りにくく見落としがち。
症状殿部上外側の限局した表在痛・灼熱感。坐骨神経痛のような下肢遠位への放散は稀
評価:腸骨稜後上外側のトンネル部圧痛/ピンチで増悪。ブロックが診断的治療になることも。
治療:胸腰筋膜への持続的スライド圧・方向性リリース、体幹伸展過多の是正、セルフでやさしい皮膚牽引


⑤ 腰部脊柱管狭窄症(LSS)

殿部の痛みと原因:腰部脊柱管狭窄症

要点:骨・靱帯肥厚や椎間板膨隆で神経要素を機械+虚血で圧迫。
症状:腰〜殿部痛+間欠性跛行前屈で軽快・伸展で増悪が典型。
評価:神経学的所見、前屈位での歩行耐久の改善、画像所見。
治療

  • 変性(骨・靱帯)が主なら保存+必要時手術

  • 体幹・股関節の屈曲位での荷重訓練、歩行プログラム、座位背もたれ調整。

  • 馬尾症状や高度の跛行・麻痺は早期外科検討。


ぱっと見分けるミニ鑑別

  • 片側PSIS点状痛/荷重でズキッ → SIJ

  • FAIRで増悪・坐骨ラインに放散 → 梨状筋症候群

  • 内旋優位・外旋制限+鈍い張り → 深層外旋筋伸張痛

  • 殿上外側の表在・線状痛のみ → 上殿皮神経障害

  • 前屈で楽、伸展で悪化、歩くほど辛い → 脊柱管狭窄


よくある質問(Q&A)

Q1. 産後から片側のお尻がズキズキ。骨盤ベルトは有効?
A. 短期的安定化には有効です。併せて股関節伸展可動域の回復腰多裂の促通を行うと再発予防につながります。

Q2. 坐骨神経痛っぽいけど腰の画像は問題なし。何を疑う?
A. 梨状筋症候群上殿皮神経障害を鑑別。FAIRテストや殿部の限局圧痛で絞り込みます。

Q3. 外旋筋のストレッチは痛いほど伸ばした方が良い?
A. いいえ。軽度不快〜心地良い範囲で30–60秒反復。強すぎる伸張は反射的防御収縮と炎症の再燃を招きます。

Q4. 脊柱管狭窄で遠くまで歩けません。運動は?
A. **前屈位での歩行(ショッピングカート押し)**や自転車エルゴメータから開始。増悪する伸展位は避け、持久を漸増します。


最終更新:2025-10-06