炎症(時期別)の運動療法について

大原則

  • 炎症そのものを“消す”ことはできない。 セラピストができるのは再燃を防ぎながら、適期に適量の刺激を入れること。

  • 3期は目安でオーバーラップします。疼痛・腫脹・熱感・機能の経過で都度アップデートを。


1)急性期(0〜3日めの目安)

病態:組織損傷直後。化学伝達物質の放出と血管反応が強い時期。
目的再炎症の回避と痛み・腫れの管理

やること

  • 相対的安静(疼痛誘発動作は回避)。

  • 冷却(熱感が強ければ短時間・間欠的に)。

  • 圧迫・挙上(可能な部位)。

  • 患部以外の部位への軽い介入(浮腫を悪化させない範囲の循環促進や姿勢調整)。

避けること

  • 患部への関節操作や強いストレッチ/マッサージ

  • 痛みを我慢しての反復動作。必要に迫られる活動(仕事・試合等)の後はアイシング+圧迫でリカバー。


2)修復期(4〜14日めの目安)

病態:肉芽形成・線維芽細胞増殖が進行。まだ瘢痕の強固化前
目的滑走の維持ROM制限の予防腫脹コントロール

やること

  • 圧迫(弾性包帯等)で浮腫を抑え、その状態での軽い関節運動無痛域内)。

  • 層別の軽接触(皮膚→皮下→筋膜)で滑走刺激を最小限から。

  • 頻度>強度:短時間・高頻度の自動/自動介助ROM

避けること

  • 痛みを越える強圧・長時間の徒手刺激

  • 炎症サイン(熱感・腫脹・疼痛)が活動後に悪化する負荷設定。


3)癒着・瘢痕期(15日め以降の目安)

病態:コラーゲン束の配向・再編(リモデリング)。瘢痕由来の滑走不全がROM制限の主因に。
目的癒着の剥離(滑走再獲得)と機能的ROMの積み上げ

やること

  • 滑走誘導:軽い剪断→組織間の“すべり”を引き出す。

  • 低負荷・持続的伸張(LLLD)自動運動での定着

  • 防御性収縮(攣縮)があれば先に鎮静(温罨・呼吸・低負荷等尺)してから伸張へ。

避けること

  • 痛みで呼吸が止まる強さの伸張(防御を誘発し逆効果)。

  • 「その場で結果」を狙った過大刺激(翌日の増悪で後退)。


過去のケガの聴取を忘れない

  • 未処置の癒着・瘢痕長期残存しやすい。既往歴は時期・部位・経過まで掘り、関連痛や張力線の偏りを疑う。


すぐ使える処方の例

  • 急性期:圧迫+挙上+10–15分冷却(間欠)/疼痛誘発動作ゼロ宣言

  • 修復期:圧迫下での無痛域ROM(20–30回×日数回)/皮下〜筋膜の軽剪断

  • 瘢痕期滑走誘導1–2分→LLLD30–60秒→自動運動反復/日内反復で定着


よくある質問(Q&A)

Q1. 時期は必ず0–3・4–14・15日〜で固定?
A. 目安です。 痛み・腫脹・熱感・機能で前後します。サインが強ければ前段階に戻す

Q2. 冷やす?温める?
A. 急性の熱感が強い間は冷却を優先。熱感が引き、硬さと可動の問題が前面に出たら温罨→ROMへ。

Q3. いつから“ほぐして”いい?
A. 修復期の初期は軽接触と滑走維持に限定。 明らかな炎症再燃がないことを確認しつつ、瘢痕期に強度を段階的に上げる。

Q4. ROMは痛みを我慢してでも広げる?
A. No。 痛み閾値を越える刺激は防御性収縮再炎症を招く。無痛〜軽度不快頻度を増やすのが近道。

Q5. どの指標で前進を判断?
A. 日内変動の減少無痛域の拡大活動後の腫れが増えない機能課題(着替え・階段等)の易化週単位で記録


最終更新:2025-10-09