片頭痛のリハビリ治療

頭痛の大まかな分類

  • 筋骨格由来:緊張性頭痛(肩・頸部の筋緊張や姿勢が関与)

  • 神経血管由来:片頭痛、群発頭痛(痛み神経と血管反応の異常が関与)

緊張性頭痛 片頭痛
痛みの部位 片側/両側 通常は片側(両側のことも)
痛みの性質 締め付け・圧迫感 拍動性(ズキズキ)、刺すような痛み
動作での変化 あまり変わらない 悪化しやすい(階段、歩行など)
付随症状 なし〜少ない 悪心/嘔吐、光過敏、音過敏、嗅過敏、前兆(視覚)
手技の目的 筋緊張の低減 三叉神経血管系の過敏の軽減+関連筋・姿勢の整え

有病率は成人で約8〜10%。女性が男性の約3〜4倍と報告されています。


片頭痛の病態(いま分かっていること)

  • 三叉神経血管系の活性化 → 炎症性神経ペプチド(CGRPなど)放出 → 痛み増幅

  • 皮質拡延性抑制(CSD):一部の片頭痛で、視覚の前兆(ギザギザ・暗点など)と関連

  • 脳幹痛覚調整の異常:感覚過敏や反復発作への関与

  • かつての「血管拡張=主因」だけでは説明しきれず、神経と血管の相互作用として理解されています。

代表的トリガー

睡眠リズムの乱れ、空腹/脱水、月経、強い光・音・匂い、カフェイン過多または離脱、ストレス(とその反動解放)。


群発頭痛(重症の一側頭痛)

  • 季節性・概日性に群発(1回15分〜3時間、1日1〜8回が数週〜数か月続く)

  • 眼窩〜側頭の激烈な一側痛片側の流涙・鼻汁・眼充血・眼瞼下垂など自律神経症状

  • 治療は医療の領域:高濃度酸素、皮下/経鼻トリプタン、予防にベラパミルなど
    → 疑いがあれば速やかに専門受診を。


リハビリ・徒手介入の位置づけ

片頭痛そのものは神経血管性。ただし、頸部筋緊張や姿勢ストレスが閾値を下げることは多いため、理学療法は「発作閾値の引き上げ」に寄与します。

できること(推奨度の高い順)

  1. 生活リズム調整:起床・就寝・食事・カフェインの一定化、適度な水分

  2. 有酸素運動:週3〜5回、20–40分の軽〜中強度(歩行/自転車など)

  3. 頸肩周りの筋持久力と可動性:僧帽筋下部・頸屈筋群の強化、胸椎伸展のモビリティ

  4. リラクセーション/ストレス対処:呼吸法、漸進的筋弛緩、マインドフルネス

  5. 教育:トリガー日誌で誘因の見える化、急性期薬の適切使用(※医師管理)

徒手的アプローチについて

  • 頸部軟部組織の過緊張胸郭の可動性低下を狙ったソフトティッシュリリースやモビライゼーションは補助的に有効なことがあります。

  • 「耳介牽引で頭蓋減圧」のようなテクニックは個人差が大きく、エビデンスは限定的。不快感があれば中止し、より標準的な頸肩介入に切り替えましょう。

薬物療法(急性期:トリプタン/ゲパント、予防:β遮断薬、トピラマート、CGRP関連薬など)は医師と連携して最適化を。


受診が必要な「赤旗(レッドフラッグ)」

  • 突然の雷鳴様頭痛、今までで最悪の頭痛

  • 発熱、項部硬直、意識障害、麻痺/失語/複視など神経徴候

  • 50歳以降に初発、がん/免疫不全/妊娠・産褥

  • 進行性に増悪、外傷後、眼の激痛や視力低下(急性緑内障疑い)
    → これらは至急の医療機関受診を。


家でできるセルフケア(急性期)

  • 暗く静かな部屋で休む、冷罨法(こめかみ/後頭部)

  • 水分をとる、カフェインは少量にとどめる

  • 医師から処方の急性期薬は早期内服(遅らせない)


よくある質問(Q&A)

Q. 片頭痛と緊張性頭痛、セルフチェック法は?
A. 拍動性・悪心・光/音過敏の3つのうち2つがあれば片頭痛の可能性が高め。両側の締め付け+動いても悪化しないなら緊張性頭痛寄り。

Q. 姿勢改善だけで片頭痛は治りますか?
A. 単独で「治る」とは言い切れませんが、発作頻度・強度の低減に役立つことが多いです。生活リズム・運動・薬物療法との組み合わせが鍵。

Q. 片頭痛の日に運動していい?
A. 急性期は無理をしない。小康期に軽〜中強度の有酸素運動を継続すると、長期的には発作抑制に有利です。

Q. 食事で気をつけることは?
A. 空腹を避ける、脱水防止、過度のアルコールとカフェインの波を作らない。個別トリガー(チラミン含有食品など)は日誌で同定

Q. 手技で耳を引く方法は効きますか?
A. 不快がなければ軽微なリラックス感が出る人もいますが、確立した標準治療ではありません。頸肩の介入+セルフケアの方が汎用性・再現性が高いです。


最終更新:2025-10-05