筋肉の脂肪変性が生じやすい場所と症状

概要

  • **筋の脂肪変性(脂肪浸潤)**は、筋線維間・筋内に脂肪組織が入り込む病態。長期の不使用(廃用)神経支配の低下腱断裂による機械的不活性などが背景になりやすい。

  • 一度生じると可逆性は低い(難逆性)ため、発生予防と進行抑制が臨床の主眼。

病態のポイント

  • 使えない期間が長いほど、筋萎縮に加えて脂肪化が進みやすい(ギプス固定、疼痛回避、断裂後の筋の短縮・伸張不足など)。

  • 拮抗筋の過緊張や関節アライメント不良が続くと、目的筋が**慢性的に“使われない”**状態となり脂肪変性リスクが上がる。

画像診断の勘どころ

  • MRI

    • T1強調:脂肪は高信号で最も識別しやすい。

    • T2強調でも明るく見えることがあるが、**脂肪抑制(FS/STIR)**をかけると脂肪信号は抑えられる。

    • 記述の例のようにT2像での明瞭な高信号として捉えられることもあるが、脂肪評価はT1やFS併用が基本

  • 計量評価:腱板ではGoutallier分類など段階評価が予後の目安(手術成績との関連が知られる)。

好発例と臨床像

腱板(とくに棘下筋・棘上筋)

  • 断裂三角筋優位の挙上肩甲骨の協調性低下で腱板が働かず、脂肪変性+萎縮が進みやすい。

  • 外旋筋(棘下筋)の低出力は、肩甲上腕リズム破綻と上方偏位→インピンジメントを助長。

腰部多裂筋

  • 深層線維は椎間レベルの姿勢制御・安定化に寄与。

  • フラットバック/長時間屈曲姿勢、疼痛回避で不使用が続くと萎縮・脂肪化が進み、慢性腰痛・椎間板変性の悪循環に。

介入方針:予防と進行抑制(できること/避けること)

1) “使える条件”づくり(疼痛・配列)

  • 疼痛コントロール:痛み0–3/10で反復可能な窓を確保。

  • 配列最適化

    • 肩:肩甲骨後傾・上方回旋上腕骨軽外旋バイアスで腱板が働きやすい肢位へ。

    • 腰:**軽い腰椎前弯(ニュートラル)**を保てる座位(骨盤をやや前傾、胸郭を起こす)。

2) 低負荷・高頻度の“呼び戻し”

  • 等尺→短アーク運動→機能的課題の順に。疲労前に止める原則。

  • 腱板:肘脇タオル挟み等尺外旋外旋付与の低角度挙上壁スライド(肩甲骨後傾・上方回旋)。

  • 多裂筋腹臥位での穏やかな脊椎セッティング四つ這いバードドッグ(小可動域)座位での軽い骨盤前傾-胸郭挙上リセットこまめに

3) 拮抗筋の過緊張を“下げる”

  • 肩前方(小胸筋・肩甲下筋)や腰背部表層(脊柱起立筋表層・ハムなど)の低強度リリース/短時間ストレッチ(30–60秒)→すぐ目的筋の軽い収縮を重ねる(抑制→促通)。

4) 生活・姿勢のミニ介入

  • 1時間に1回の“数十秒エクササイズ”(頻度>強度)。

  • 長時間の屈曲・猫背・腕内旋位を分断。

  • 歩行の再開:痛み管理下で短時間から。腰は歩行で多裂筋が自然賦活されやすい。

5) 避けたいこと

  • 痛みを我慢した高負荷(翌日悪化→不使用を強化)。

  • フォーム崩れでの反復(代償学習)。

  • “リリースだけ”や“筋トレだけ”の片寄り抑制→促通→機能課題のセットで)。

期待値の整理

  • 脂肪変性は難逆性:完全な戻りは期待しづらいが、出力・持久・協調は十分に改善可能。

  • 目的は使える時間を増やす」「代償を減らす」「痛みの悪循環を断つ」こと。


すぐ使えるミニ処方(例)

  • 腱板:タオル外旋等尺 5秒×10、外旋付与挙上(30–60°)10回×2、壁スライド10回×2(1日数セット)

  • 前方抑制:小胸筋ストレッチ30秒×2→直後に外旋等尺

  • 多裂:腹臥位で骨盤軽前傾+下腹部ドローイン10秒×5、バードドッグ小可動域5回×2、座位で胸郭リセット10秒×数回/時


よくある質問(Q&A)

Q1. 脂肪変性は運動で元に戻りますか?
A. 難逆性です。ただし筋力・持久力・協調性は改善可能。痛みの低減と機能向上は十分期待できます。

Q2. どのくらいの頻度でやれば良い?
A. 短時間×高頻度が有効。1時間に数十秒の“呼び戻し”を一日を通して。

Q3. まず何から?
A. 疼痛と配列の整備等尺の再導入小可動域の反復。痛みが増えるなら直前の段階に戻す

Q4. 姿勢はどこを見る?
A. 肩は肩甲骨後傾・上方回旋、腰は軽前弯(ニュートラル)。長時間の屈曲位を避ける。

Q5. 画像で脂肪変性と言われた。運動は意味ある?
A. 意味は大いにあります。 目的は出力の最大化と代償の最小化、再発の抑制。痛みの自己管理力も向上します。


最終更新:2025-10-09