膝蓋靱帯と膝蓋支帯

膝蓋靱帯と支帯の概要

  • 膝蓋靱帯(=膝蓋腱):大腿四頭筋腱の続き。膝蓋骨を介して筋力を脛骨粗面へ伝える“牽引コード”

  • 膝蓋支帯:膝蓋骨の両側で“取付け金具”のように位置し、膝蓋骨の横ぶれ(トラッキング)を制御

    • 内側膝蓋支帯(MRP):主に**内側広筋(特にVastus medialis oblique; VMO)**由来の線維を受け、内側からガイド。

    • 外側膝蓋支帯(LRP)外側広筋+腸脛靭帯からの線維を受け、外側からガイド。

基本データ(臨床で使うポイントだけ)

膝蓋靱帯

  • 起始:大腿四頭筋腱(膝蓋骨下極を介して連続)

  • 停止:脛骨粗面

  • 張りやすい肢位膝屈曲

  • 緩みやすい肢位膝伸展

内側膝蓋支帯(MRP)

  • 起始:内側広筋(VMOを含む)

  • 停止:膝蓋骨内縁、脛骨内側上端、内側側副靱帯と連結

  • 機能の要点:膝蓋骨の外側偏位をブレーキ。VMOの機能低下で効きづらくなる。

外側膝蓋支帯(LRP)

  • 起始:外側広筋、腸脛靱帯(ITB)

  • 停止:膝蓋骨外縁、脛骨外側上端

  • 機能の要点:タイトだと膝蓋骨を外側へ引っ張る。ITBや外側広筋の過緊張で外側偏位が固定化


関連しやすい疾患とメカニズム

  • 膝蓋骨不安定症/外側脱臼傾向:LRPタイト+VMO機能不全で外側偏位→亜脱臼

  • 膝蓋大腿関節症(PFPS):外側優位で膝蓋下脂肪体・外側関節面に摩耗・疼痛。伸展末期で軋轢感が出やすい。

  • 膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝):膝屈伸の反復+伸展モーメント増大で膝蓋腱付着部痛

  • 膝関節拘縮:伸展制限があると歩行・立位で四頭筋トーヌス↑→さらに拘縮の悪循環。

  • 膝蓋骨低位(patella baja)膝蓋腱/支帯の短縮が一因。

    • Insall–Salvati比(膝蓋腱長/膝蓋骨長)≤0.8で低位, ≥1.2で高位の目安。

※PFPSや外側偏位には、股関節内旋・膝内反(ニーイン)、下腿外旋、足部過回内などの運動連鎖も強く関与。**局所(支帯)+近位・遠位(股・足)**の両面評価が鍵。


評価のコツ(すぐ現場で使える)

  • 膝蓋骨トラッキング:0–30°屈曲域での外側滑走優位Jサインを観察。

  • 膝蓋骨モビリティ外側移動の硬さ>内側ならLRPタイトを疑う。

  • 脂肪体サイン:伸展・押圧で前下方(膝蓋下)痛が強ければ膝蓋下脂肪体の関与を考慮。

  • アライメント:Q-angle増大、回内足、股内旋可動域・筋力、ITBタイトネス(Ober)をセットで。


リハビリの要点(順番が大事)

  1. 疼痛と炎症のコントロール
    活動調整、アイシング、テーピング(内側誘導脂肪体オフロード)。

  2. 外側優位の是正

    • 外側膝蓋支帯・ITB・外側広筋ソフトティッシューリリース+ストレッチ

    • 膝蓋骨モビライゼーション内側・尾側方向を丁寧に

  3. 内側動的安定化

    • VMO促通パテラセッティング素早くリズミカルに、痛みなしで)

    • 股外旋/外転筋(中殿筋後部)強化ニーイン抑制

  4. 遠位連鎖の修正

    • 過回内の管理:足底板・シューズ選定、足部内在筋トレ

    • 足関節背屈可動域の確保(背屈不足→代償的に膝前面負荷↑)

  5. 動作再学習
    スクワット・階段・ランで膝蓋骨の内外偏位を最小化するラインを徹底指導。


よくある質問(Q&A)

Q1. 膝蓋骨が外側にズレやすい人、まず何から?
A. 痛みがあれば鎮痛→LRP/ITBのリリース→膝蓋骨の内側モビリティ回復→VMO促通の順。股外旋・外転筋も同時に賦活を。

Q2. 膝蓋骨低位はストレッチで改善しますか?
A. 軟部組織短縮が主因なら膝蓋腱・支帯の尾側滑走性の改善症状は軽減しうるが、X線比(≤0.8)自体を大きく変えるのは困難。機能改善が主眼。

Q3. 脂肪体痛はどう扱う?
A. 伸展終末で痛ければ“挟み込み”を疑う膝蓋骨の尾側・内側誘導、伸展域の一時回避、テーピングで減圧しつつ、外側優位を是正。

Q4. 再発予防の肝は?
**A. 近位(骨盤・股)と遠位(足部)の連鎖を整えること。**VMOだけでは不十分。股外旋/外転筋+足部アーチ機能を必ず併走。


最終更新:2025-10-08