以前に腓腹筋の筋痙攣の対処法として、「腰痛で筋痙攣(こむら返り)が起こる原因と対処法」という記事を書きました。
その記事では、足がつるメカニズムから、一般的な対処法についてまでを解説しています。
しかしながら、それらの方法を実施しても解決しないことが多く、まだまだ人体はよくわからないなと痛感していました。
そんな中で腰痛治療のひとつとして後方筋膜のリリースをしていたら、そこからこむら返りが改善されるケースがいることに気付きました。
後方筋膜とはなにかを簡単に書くと、身体後方の組織を連結させながら全体を覆っている膜であり、足の先から頭の前までを繋いでいます。
後方筋膜は腓腹筋にも繋がっているため、極端なことを書くと、額の前頭筋が硬くなることで腓腹筋にまで影響を与えることになります。
どのような影響が起こるかを記載する前に、どうして足がつるのかについて、そのメカニズムを簡単に説明していきます。
筋肉は大きく分けて筋部(筋紡錘)と腱部(腱紡錘)に分けられますが、筋紡錘は筋肉の伸び過ぎを、腱紡錘は筋肉の縮み過ぎを調整しています。
筋肉の過剰な収縮(痙攣)が起こった場合、通常なら腱紡錘が伸ばされて反応するために筋肉は緩む方向に働きます。
それが何らかの理由によって腱紡錘が作用しなかったら、いつまで経っても収縮がおさまらない状態となります。
これが筋肉の攣る原因なわけですが、筋膜が硬い状態というのは、腱紡錘が上手く伸張されていないことが推察されます。
こむら返りの場合、腓腹筋がガチガチに張っているならわかりやすいですが、実際はほとんど張りが感じられない場合も多いです。
そのような人にいくらアキレス腱のストレッチをしてもらったとしても、それはやはり効果がないと言わざるを得ません。
そんなときに先ほどの後方筋膜の図を見ていただきたいのですが、腓腹筋よりも上方の組織が硬くなっている可能性があるわけです。
どこが硬結しているかは実際に触れて探してほしいのですが、わたしの経験上だと仙結節靭帯が最も問題となっていることが多いです。
探し方としては、まずは膝関節を屈曲してもらうことでハムストリングスの起始である坐骨結節を見つけます。
そのすぐ内上方が仙結節靭帯であり、坐骨結節に近い部分が硬くなっている場合が多いので、そこを重点的にマッサージしてください。
筋痙攣は腓腹筋に起こりやすいですが、その他にもハムストリングスや大腿四頭筋、前脛骨筋にも発生しやすいです。
前述したようにハムストリングスは後方筋膜で腓腹筋と連結していますので、仙結節靭帯などの硬結が強く影響します。
また、大腿四頭筋や前脛骨筋は前方筋膜に属しており、腓腹筋やハムストリングスの拮抗筋に属しています。
後方筋膜の硬さは前方筋膜にも影響を与えるので、攣りやすい人はそのあたりの筋肉がすべて問題を起こす可能性があるわけです。
後方筋膜は腰痛の原因にもなりやすいので、それが結果的には腰が悪い人は足が攣りやすいといったことにつながります。
とくに仰臥位というのは後方筋膜が張りやすいため、後方筋膜性腰痛症の方は仰向けで寝るのがきついと訴えられることが多いです。
それが寝ているときに足が攣りやすい理由にもつながってくるので、どんな場面で痛みがあるかは聴取することが大切です。
ここまでに書いてきた内容に該当しそうな患者さんがいるようでしたら、是非とも試してみてください。