長趾伸筋(extensor digitorum longus)

この記事では、長趾伸筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

長趾伸筋の概要

長趾伸筋の起始停止

長趾伸筋は下腿の前外側に位置する筋肉で、前方は前脛骨筋に、後方は長腓骨筋に覆われています。

足趾(第2-5趾)を伸展させる主力筋ですが、他にも距腿関節の背屈、距踵関節の回内にも作用します。

長趾伸筋の下部の一部は枝分かれして、第三腓骨筋となります。

基本データ

項目

内容

支配神経 深腓骨神経
髄節 L5-S1
起始 脛骨の外側顆、腓骨前面の上部3/4、下腿骨間膜の上部、下腿筋膜、筋間中隔
停止 2-5趾の中節骨・末節骨の背側面(趾背腱膜)
栄養血管 前脛骨動脈
動作 2-5趾の伸展(DIP,PIP,MP関節)

足関節の背屈,外反

筋体積 65
筋線維長 8.7
速筋:遅筋(%) 52.747.3
筋連結
第三腓骨筋、短趾伸筋、背側骨間筋、虫様筋、長母趾伸筋、前脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋

運動貢献度(順位)

貢献度

足趾伸展(第2〜5趾)

1 長趾伸筋
2 短趾伸筋

長趾伸筋の触診方法

自己触診:長趾伸筋

母趾を屈曲位に保持し、第2-5趾を屈曲位に誘導してからの伸展運動にて、長趾伸筋腱を触診しています。

収縮することで腱が隆起しますので視覚的にも簡単に確認できます。

筋腹は腓骨頭遠位やや内側1横指付近から距腿関節すぐ手前までの間で、下腿外側面上において約1横指の幅で容易に触知できます。

下腿の断面図

下腿中央の断面図|長趾伸筋

下腿中央を断面でみた場合、長趾伸筋は前脛骨筋と長腓骨筋に挟まれるように位置しているのがわかります。

上部では脛骨の外側顆や腓骨前面、下腿骨間膜から起始しており、中央部では長腓骨筋と隔てる筋間中隔に付着しています。

ちなみに、同じ区画に存在する長母趾伸筋は下腿中央よりやや下部から起始していますので、断面図には描かれていません。

ストレッチ方法

長趾伸筋のストレッチング1

座った状態から足を組んで片手は踵を持ち、もう一方の手は第2-5指を背側から把持し、足関節を底屈・内反しながら足趾を屈曲していきます。

内反角度を変化させることで伸張する腱を選択できます。

筋力トレーニング

長趾伸筋の筋力トレーニング

足趾(第2-5指)を伸展させる際に、反対側の足を上に乗せて体重をかけることにより抵抗を加えます。

椅子などに腰かけて行うと実施しやすいです。

圧痛点と関連痛領域

長趾伸筋の圧痛点(トリガーポイント)は下腿中央の腓骨前方に出現し、関連痛は足関節前方から足背にかけて起こります。

長趾伸筋の圧痛点は足関節内反捻挫や骨折によって発生しやすく、伸筋群や第三腓骨筋の障害は距骨の外側変位を生じさせます。

長趾伸筋はSFL(スーパーフィシャル・フロント・ライン)の筋膜経線につながる筋肉であり、身体前面浅層において重要な筋肉になります。

長趾伸筋に硬結が生じるとSFLを通して股関節に問題を起こすこともあるため、ライン上の問題も考慮して対応することが大切です。

関連する疾患

足関節内反捻挫(後遺症)

長趾伸筋は前脛骨筋や長母趾伸筋と同じ区画に存在しているため、それらの筋肉に起きる障害と密に関連している状態にあります。

しかし、腓骨神経麻痺やコンパートメント症候群は前脛骨筋の障害が重要で、L4/5間の椎間板ヘルニアは長母趾伸筋の機能不全が重要な所見です。

長趾伸筋が重要となるのは足関節内反捻挫の後遺症であり、問題が残存し続けることで足関節前方から外方の痛み、足甲の痛みを訴えます。

そのため、捻挫による痛みが落ち着いてからは長趾伸筋の機能が十分に発揮できるように、筋収縮とストレッチングを行うことが重要となります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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