骨盤が歪む原因と起こるリスクについて解説

健常者でも骨盤が歪んでいる(腸骨稜が非対称)ケースは非常に多いですが、その発生には習慣的な非対称の姿勢が関与しています。

また、背部や頸部の疼痛刺激による防御性収縮反射や筋スパズム、膝関節の屈曲拘縮による脚長差などが原因として挙げられます。

上の図は、右側の骨盤(腸骨稜)が高くなっているケースです。

骨盤が傾くことで腰椎は左側に凸しており、脊椎が側彎することで右側の肩甲骨(肩峰)は下がっています。

骨盤が挙上することで股関節は上方に偏位し、結果的に見かけ上の右下肢の短縮がみられることにつながります。

骨盤を歪ませる最大の筋肉は腰方形筋ですが、腰方形筋が硬くなる原因を作っているのは中殿筋の弱化であることが多いです。

中殿筋が弱化していると歩くときに股関節が内転してしまい、骨盤を水平に保つことができず、上半身を支えるために腰方形筋が緊張します。

この状態が慢性的に続いていると徐々に腰方形筋は短縮していき、習慣的な非対称の姿勢が出来上がるわけです。

上の図は、骨盤が歪むことで起こる問題についてまとめたものです。

骨盤挙上側をみていくと、腰椎が右側屈することにより右椎間関節の負担が増加し、結果的に摩耗して椎間関節障害の発生を高めます。

股関節が内転することで大腿骨頭を覆う範囲が減少し、大腿骨頭内側あるいは中央の荷重が増加して退行性変化のリスクが生じます。

股関節が内転して大転子が外側に突出することで、股関節部の腸脛靱帯炎や梨状筋症候群の発生を高めます。

脚長差(右下肢の短縮)を補正するために右足関節は内反して荷重は足部外側縁に集中し、膝関節は内反傾向となります。

骨盤挙上側の硬くなっている筋肉には、腰方形筋や股関節内転筋群、後脛骨筋などがあります。

これらの筋肉はディープ・フロント・ライン(DFL)という筋膜上での強い繋がりを有しており、全体として問題を捉えることが重要です。

DFLの硬さはロードシスという不良姿勢を招きやすく、変形性股関節症のリスクを高めることにもつながります。

実際に腰方形筋に圧痛があるケースでは、腸腰筋や梨状筋、腰部脊柱起立筋、股関節内転筋群、後脛骨筋にも圧痛が認められやすいです。

このように問題が長引くと様々な二次的な障害が起こりますので、骨盤の歪みは修正しておくことがリスクを回避することに繋がります。

問題の根本にあるのは中殿筋の弱化や腰方形筋の短縮なので、そこを中心にアプローチしていくと効果を得られやすいです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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