要約
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膝は純粋な拘縮(筋・関節包の短縮)だけが主因になりにくく、変形性変化や関節内の機械的要因がからみやすい関節。
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まずは**正常の終末感(エンドフィール)**を基準に、筋性/関節包・靱帯/関節内を切り分けると診断が早い。
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2関節筋の鑑別、半月板ロッキング、膝蓋下脂肪体の挟み込み、スクリューホームの失調(膝窩筋・ACL機能低下)を押さえる。
正常ROMとエンドフィール
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伸展 0°:骨性ロッキング(スクリューホーム機構)で停止 → 硬い・瞬間的なエンドフィール。
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屈曲 130–145°(正座で〜145°):軟部組織接触で停止 → 柔らかいエンドフィール(さらにわずかに伸びる感覚)。
伸展が0°未満で止まる時は、本来骨性の終末が得られていない=骨・関節内/機械的要因の関与をまず疑う価値が高い。
膝はなぜ「拘縮しにくい」のにROM制限が多い?
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膝は荷重関節で可動域が大きく、純粋な組織短縮だけでの固まりは比較的少なめ。
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一方で、変形性変化(骨棘・関節隙狭小)、半月板・脂肪体の滑走不全、関節包炎・癒着など強直/機械的要因が加わりやすい。
→ 臨床で多いのは伸展制限:関節内要因+後方組織の短縮の複合。
制限因子の見立て(触診・負荷操作のコツ)
1) 筋・筋膜(拘縮系)
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エンドフィール:弾性のある“ゴム感”。触診で原因筋に張り・圧痛。
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二関節筋の鑑別
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膝屈曲制限が股関節伸展でさらに強くなる → 大腿直筋タイト(※大腿直筋は大腿四頭筋です)。
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膝伸展制限が股関節屈曲で軽くなる/股関節伸展で強まる → ハムストリング因子を示唆。
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腓腹筋が関与する伸展不全:足関節背屈を加えると張力が増しやすい(腓腹筋は膝・足関節の2関節筋)。
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主な拮抗関係
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伸展を妨げる筋:ハムストリング、腓腹筋、膝窩筋
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屈曲を妨げる筋:大腿四頭筋(大腿直筋・内側/外側/中間広筋)
2) 関節包・靱帯・皮膚(拘縮系)
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伸展制限:後方関節包・後方皮膚の短縮。
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屈曲制限:前方関節包、膝蓋上包の癒着、膝蓋下脂肪体の挟み込み。
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サイン:最終域でのつっぱり感が面状に広がる/皮膚の滑走低下。
3) 関節内・機械的要因(強直系)
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半月板ロッキング:伸展終盤でカチッと止まる・痛みを伴う/屈曲で一時的に解除されることも。
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膝蓋下脂肪体インピンジメント:伸展終盤で前面痛、膝蓋骨下の圧痛・緊張。
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スクリューホーム失調(ACL損傷/膝窩筋機能低下):伸展直前の外旋不足で“噛み合わない”終末感。
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変形・骨棘:骨性抵抗が正常域より手前で出現。
整理表
| 伸展を阻む主因 | 屈曲を阻む主因 |
|---|---|
| ハムストリング、腓腹筋、膝窩筋 | 大腿四頭筋(特に大腿直筋) |
| 後方関節包・皮膚の短縮 | 前方関節包、膝蓋上包の癒着 |
| 半月板ロッキング、ACL/膝窩筋機能不全 | 膝蓋下脂肪体の挟み込み |
| 変形性変化・骨棘 | 滑走不全(脂肪体・滑膜) |
介入の原則(順番が大事)
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危険サイン除外(熱感・発赤・著明腫脹・ロッキング固定などはまず医師へ)。
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痛みと腫脹のコントロール(冷罨法、荷重調整、テーピング・装具)。
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機械的要因の解放
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脂肪体・膝蓋上包の滑走改善(ソフトタッチでのモビライゼーション)。
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必要に応じ半月板疑いは無理に終末域へ押し込まない。
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関節包ストレッチ
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伸展狙い:後方線維群へ低負荷・長時間。
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屈曲狙い:前方包/膝蓋上包の前処置+屈曲保持。
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筋アプローチ
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タイト筋の位置覚・伸張許容を上げる(ハム/大腿直筋/腓腹)。
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膝窩筋・大腿四頭筋内側部の再教育、股関節外転・外旋筋で下肢アライメントを安定。
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機能統合
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スクワット・ステップなどCKCでの終末域近傍コントロール、歩行での終末伸展獲得。
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よくある質問(Q&A)
Q1. 伸展0°まで出ない=全部ストレッチで解決?
A. いいえ。本来骨性の終末が出ないなら関節内・機械的要因の見極めが先。無理押しは悪化リスク。
Q2. 大腿直筋とハムの見分けは?
A. 膝屈曲制限が股関節伸展で強くなる→大腿直筋タイトの兆候。膝伸展制限が股関節伸展で強くなる→ハム関与が濃い。
Q3. ロッキングが疑わしい時のコツは?
A. 無理に伸展終末へ押し込まない。軽い屈曲で一旦解放→痛みの少ない範囲で滑走改善を優先。必要なら医師へ。
Q4. 脂肪体由来の前方痛はどう見る?
A. 伸展終盤で前方の差し込む痛み+膝蓋骨下の圧痛/張り。膝蓋骨・脂肪体の滑走を先に整えてから屈伸を広げる。
最終更新:2025-10-05