膝関節内側の痛みの原因とリハビリ治療

膝内側痛は「前方(膝蓋下)」「関節内(半月板・靱帯)」「筋膜/腱付着部」の三系統で考えると整理しやすいです。臨床で多い病態を、機序→所見→対応の順に簡潔にまとめました。


① 膝蓋下脂肪体(Hoffa)損傷/インピンジメント

膝蓋下脂肪体の内側偏位

要点
膝蓋下脂肪体は膝蓋大腿関節の潤滑と衝撃吸収を担うクッション。変形性膝関節症(とくに内反位・伸展制限・膝蓋骨外側偏位・脛骨外旋)があると、脂肪体は内側/外側へ偏移+線維化し、前内側の圧痛・立位や伸展時痛を生みます。

所見

  • 膝蓋腱の内外両側(ことに内側)に圧痛

  • 伸展や膝蓋骨の外側傾斜で増悪

  • 朝の強い一歩目痛は少なめ(※あれば足底腱膜炎などを鑑別)

対応

  • 炎症期は負荷回避(長時間立位・完全伸展位の回避)

  • 脂肪体へやさしいダイレクトマッサージ/滑走改善

  • 膝蓋骨トラッキングの是正(外側緊張の低減、内側広筋の賦活)

  • 足部外反・足関節背屈制限の改善(後述)


② 筋膜性疼痛

要点
内転筋群~鵞足腱~腸腰筋~後脛骨筋に連なる深層筋膜の滑走不全で内側痛が持続。受傷機転が乏しく、日内/日差変動があるのが特徴。

所見

  • 内転筋腱板・鵞足・後脛骨筋走行に索状の圧痛

  • 内側広筋(VM)の働きの遅れや収縮の弱さ

対応

  • 圧痛点を軽圧で多方向へシア(3–4分)→滑走回復

  • DFLの伸張(内転筋・腸腰筋・後脛骨筋)

  • VM賦活(パテラセッティング、終末伸展)+股関節戦略(外転/外旋)


③ 膝蓋大腿関節症(内側膝蓋支帯の機能不全を含む)

要点
内側広筋は内側縦/横膝蓋支帯へ連続。VM機能不全+腸脛靱帯や外側膝蓋支帯の過緊張で膝蓋骨が外側・外上方へ偏位し、内側線維の伸張痛が出現。

所見

  • 階段・しゃがみで前内側痛/膝蓋骨外側への偏位・傾斜

  • 膝蓋骨外方誘導で不快、内方グライドで軽減

対応

  • 殿筋群(中殿筋後部・大殿筋)強化でKnee-in/Toe-out修正

  • VM賦活+膝蓋骨内方モビ、外側組織(ITB)のリリース

  • 足部過回内があれば足部アライメントも介入


④ 内側半月板損傷

膝関節内側の痛み|内側半月板損傷

要点
半月板の外周1/3のみに血流と侵害受容器。辺縁部断裂のみ痛みが生じやすい。内反・内旋で外縁が開き痛みを誘発。

所見

  • McMurray/Thessalyで内側痛やクリック

  • 退行変性:内反膝・屈曲拘縮で悪化

  • スポーツ:Knee-in+下腿外旋で発生しやすい

対応

  • 屈曲拘縮の除去、股外転・外旋筋強化でKnee-in抑制

  • 活動量調整→反復ロッキングや機械的症状が強ければ整形外科へ


⑤ 膝内側側副靱帯(MCL)損傷

膝関節内側の痛み|内側側副靭帯

要点
外反強制で損傷。MCLは関節外靱帯のため大きな血腫/関節水腫は目立ちにくい(ただし関節包/半月板併存で水腫も)。

所見

  • 伸展位~30°屈曲位の外反ストレスで動揺性/疼痛

  • 限局圧痛が靱帯線維上に一致

対応

  • 短期固定→段階的可動域→内側動的安定化訓練(ハム内側群・VM)

  • 併存のKnee-in/Toe-out股関節から修正


⑥ 鵞足炎(滑液包炎を含む)

膝関節内側の痛み|鵞足炎

要点
縫工筋・薄筋・半腱様筋腱とMCLの擦れで炎症。階段・ランで痛むことが多い。

所見

  • 脛骨近位内側(鵞足)に限局圧痛/腫脹

  • 抵抗下の膝屈曲や股内転で痛み

対応

  • 負荷コントロール、近位因子(股外転筋の弱さ、骨盤動揺)の是正

  • ハム短縮・内転筋過緊張のリリース/ストレッチ


⑦ 大腿骨内顆骨壊死(SONK/自発性骨壊死)

要点
中高年女性に多く、内側顆の荷重/微小骨折が背景(ステロイド後でも)。画像所見=痛みの原因とは限らない点に注意。

所見

  • 内側荷重で増悪、夜間痛も

  • MRIで骨髄浮腫~壊死域

対応

  • 免荷(杖)・外側ウェッジ・サポーターで内側荷重軽減

  • 改善乏しい/陥没大→HTO、高度例→TKAを検討


併存しやすい足部・股関節の問題

  • 足関節背屈/外反制限→後方荷重・外側接地が増え、前内側痛を助長

  • 股外転/外旋筋の弱さ→Knee-in/Toe-outを招き、PFPS・鵞足炎・MCL/半月板に波及


よくある質問(Q&A)

Q1. 膝蓋下脂肪体と半月板の痛み、簡単な見分けは?
A. 前面の膝蓋腱両脇の圧痛+伸展で痛い→脂肪体寄り。捻り(内反/内旋)で深部痛やクリック→半月板を優先して疑います。

Q2. 内側膝の痛みで“まずやる”セルフ対策は?
A. 痛み期は階段・深屈曲・長時間立位を控え、アイシング足部からの整え(足首背屈のストレッチ)を。歩行は短距離×複数回に分割。

Q3. VMO(内側広筋)は本当に効かせられますか?
A. パテラセッティング+終末伸展(0〜20°)股内転を軽く加えると入りやすい。股関節外転・外旋筋の強化も並行が効果的。

Q4. 画像で骨壊死が出た=手術が必要?
A. いいえ。症状と機能で判断します。軽症は免荷と装具で改善する例も。陥没や強い痛み持続で手術を検討します。


最終更新:2025-10-06