この記事では、大菱形筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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大菱形筋の概要
大菱形筋は胸椎T1〜T4の棘突起から起始し、肩甲骨の内側縁下部に停止しており、肩甲骨を下方回旋・内転させる主力筋です。
菱形筋(rhomboid)は大菱形筋と小菱形筋に分類されますが、明確な境界はなく、約11%はふたつが結合して菱形筋となっています。
両者の分け方としては、「胸椎」から起こるものを大菱形筋、「頸椎」から起こるものを小菱形筋と呼んでいます。
※ 図は僧帽筋を取り除いた状態 |
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 肩甲背神経 |
髄節 | C4-5 |
起始 | 第1-4胸椎の棘突起 |
停止 | 肩甲骨の内側縁下部 |
栄養血管 | 肩甲背動脈 |
動作 | 肩甲骨の内転,挙上,下方回旋 |
筋体積 | 118㎤ |
筋線維長 | 17.8㎝ |
速筋:遅筋(%) | 55.4:44.6 |
※筋体積と筋線維長は小菱形筋まで含んだ数値です。
運動貢献度(順位)
貢献度 |
肩甲骨内転 |
肩甲骨下方回旋 |
肩甲骨挙上 |
1位 | 僧帽筋(中部) | 大菱形筋 | 僧帽筋(上部) |
2位 | 大菱形筋 | 小菱形筋 | 肩甲挙筋 |
3位 | 小菱形筋 | 小胸筋 | 大菱形筋 |
4位 | - | - | 小菱形筋 |
大菱形筋の触診方法
腹臥位をとってもらい上肢を背中に回して肩甲骨を浮き上がらせます。
肩甲骨の内側縁に指腹を押し込むことで、僧帽筋の深部にある大菱形筋を触知しています。
ストレッチ方法
両腕をクロスさせ、伸張したい側の上肢を水平内転させながら、肩甲骨を外転方向に誘導していきます。
筋力トレーニング
手首に重りを付けて壁に手をつき、体幹を前屈した状態から肩関節を伸展させて、できるだけ後方に高く引き上げます。
肩甲骨が内転するように意識して実施することにより、選択的に菱形筋を強化することが可能となります。
トリガーポイントと関連痛領域
大菱形筋の圧痛点(トリガーポイント)は停止付近の肩甲骨内側縁に出現し、関連痛は肩甲骨内側縁に沿って放散します。
肺気腫などで胸郭が拡大した患者では菱形筋や小胸筋の緊張が強く、トリガーポイントが形成されやすいです。
アナトミートレイン
菱形筋はアナトミートレインにおけるDBAL(ディープ・バックアーム・ライン)の筋膜経線につながる筋肉です。
DBALは菱形筋を介して小指に終着しますので、硬結が存在すると指先まで牽引力が伝わり、手や小指にしびれが生じます。
菱形筋はSPL(スパイラル・ライン)にも属しており、前鋸筋と対側の頭板状筋および頸板状筋と連結しています。
SPLは身体を二重ラセンで取り巻いており、主に回旋方向への力の伝達とバランスの維持に寄与します。
肩甲骨の深層で菱形筋と前鋸筋は強く接続しており、両筋は肩甲骨自体への付着よりも強力に深筋膜を介して連結します。
関連する疾患
- 胸郭出口症候群
- 肩関節不安定症
- 肩関節周囲炎 etc.
胸郭出口症候群(肋鎖間隙)
胸郭出口症候群牽引型では、菱形筋、僧帽筋中部線維による肩甲骨の胸郭への固定作用が低下している症例が多く、疼痛の発生に強く関係しています。