概要(まず押さえるポイント)
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健常者でも左右非対称(腸骨稜高の差)はよくある。多くは習慣的な非対称姿勢や痛みに伴う防御収縮、膝屈曲拘縮→機能的脚長差などが関与。
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右腸骨稜が高位の例:骨盤の右挙上→腰椎の左凸(右側屈)→見かけ上の右下肢短縮、肩甲帯は代償で右肩が下がるなどの連鎖が起こりやすい。
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機序の核:中殿筋の弱化(骨盤水平保持の不全)に対し、腰方形筋(QL)が過活動/短縮して代償的に骨盤を引き上げる。
注意:ここでの「歪み」は可逆的な機能的側方傾斜を主に指しています。構造的差異(先天的形態差や骨変形)が疑われる場合は画像評価と医療機関連携を。
なぜ起こる?(連鎖の整理)
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中殿筋弱化 → 片脚支持で股関節が内転し骨盤が水平を保てない
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骨盤を支えるためQLが持続的に収縮 → QL短縮・腸骨稜の挙上側が固まりやすい
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慢性化 → 腰椎は挙上側へ側屈、肩甲帯は反対方向へ代償、見かけ上の脚長差や歩容の左右差が固定化
二次的に起こりやすい問題(右挙上例)
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脊椎:右側屈位が続き右椎間関節負荷↑ → 椎間関節性疼痛リスク
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股関節:内転位が続くと関節包・関節面の局所負荷偏在(内側〜中央荷重↑)
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外側股部:大転子突出に伴い腸脛靱帯炎や梨状筋関連痛を助長
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膝・足:見かけの右下肢短縮を補う右足の内反傾向→外側荷重、膝は内反方向に偏りやすい
関与しやすい筋・筋膜連鎖
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硬くなりやすい(挙上側):腰方形筋、股関節内転筋群、後脛骨筋 など
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これらはDeep Front Line(DFL:ディープ・フロント・ライン)の概念上で連続性をもつとされ、全体で評価・介入すると効率的。
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※DFLは臨床仮説の枠組み。個体差が大きいため、機能評価で裏付けを取りながら運用を。
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評価のすすめ方(実践手順)
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視診・触診:腸骨稜・ASIS/PSISの左右差、腰椎の側屈、肩甲帯の代償
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機能的脚長差の鑑別:
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仰臥位でASIS–内果間計測、ロングシットテスト(臨床参考)
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膝屈曲拘縮や**足部アライメント(回内/回外)**を同時に確認
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股外転機能:トレンデレンブルグ徴候、片脚スクワットで骨盤水平保持の可否
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QL短縮・過活動:側屈ROM・圧痛、側板(サイドプランク)での代償出現
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必要時:X線などの画像で構造的要因を除外/併存確認
介入(“緩める→使う→統合”)
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抑制・モビライゼーション
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QLのソフトティシュー/ストレッチ(呼吸併用、骨盤ニュートラルを意識)
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股関節内転筋・後脛骨筋など挙上側で過活動な組織のトーンダウン
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アクティベーション(直後に使う)
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中殿筋(特に後部線維)・大殿筋の外転・外旋賦活(クラム、モンスタウォーク、ヒップヒンジ)
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骨盤水平保持の学習:片脚立位で骨盤―股―膝―第2趾を一直線に
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統合(動作・環境)
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歩行・階段・スクワットで左右対称荷重、上体の側方偏位抑制
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足部:必要に応じインソール、シューズ指導
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膝屈曲拘縮が脚長差に効いていれば伸展可動域改善を優先
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再発予防
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左右交互荷重の習慣化(立位・座位のアンバランス是正)
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デスクワークでは座面・肘掛け高さを調整し片側荷重癖を減らす
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よくあるQ&A
Q1. 骨盤の“歪み”は必ず治すべき?
A. **症状や機能低下がなければ“正常範囲の個性”**であることも。痛み・機能障害・反復する代償がある場合は介入価値が高いです。
Q2. どこから着手するのが効率的?
A. 原因になりやすい中殿筋の賦活を先に行い、QLのトーンを下げると再現性が高いです。緩めるだけ・鍛えるだけは再発しがち。
Q3. 片脚立位で骨盤がすぐ傾く…フォームのコツは?
A. 肋骨を骨盤の上に積むイメージで体幹を立て、膝蓋骨は第2趾方向、足圧は踵—母趾球—小趾球に均等。
Q4. インソールは必須?
A. 足部因子(過回内/内反、前足部の偏り)が強い場合は有効。運動療法と併用すると維持しやすいです。
Q5. いつ医療機関へ?
A. 安静時痛・夜間痛、神経症状、外傷歴、進行する構造的変形が疑われるときは整形外科で評価を。
まとめ
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中殿筋の弱化→QL代償→側方傾斜固定化が典型。
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介入はQLなど短縮筋の抑制→中殿筋の即時賦活→動作統合の順。
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膝拘縮・足部アライメント・日常の非対称姿勢まで含めて全体最適で考えると長期安定が得やすい。
最終更新:2025-10-08


