肩関節周囲炎のリハビリ治療

肩関節周囲炎の概要

  • 肩関節周囲炎=五十肩(癒着性関節包炎)。40〜50代の女性に多く、原因は明確ではありません。

  • 多くは1〜2年で自然寛解。若年ほど回復は早い傾向。糖尿病があると発症リスク・遷延リスクが高まります。

  • 画像(X線/MRI)は原則大きな異常なし。ただし関節造影では関節包の容量低下(腋窩陥凹の消失)が確認されます。

  • “五十肩”と診断されていても、腱板損傷など他疾患のこともあるため鑑別が重要。


病期(典型的な経過)

  • 第Ⅰ期:疼痛期(〜約4か月)
     強い炎症。安静時痛・夜間痛・運動時痛。周囲筋の防御性収縮でROMは大きく低下。

  • 第Ⅱ期:拘縮期(約4〜6か月以降)
     炎症は漸減。夜間痛は軽減するが運動時痛+ROM制限が残る。関節包の肥厚・癒着が主因。

  • 第Ⅲ期:寛解期(約6か月以降)
     炎症はほぼ消失。可動域は徐々に回復するが、最終域の硬さはしばらく残ることが多い。

典型例では3〜4か月で疼痛ピーク→その後痛みは減るが関節包の縮小によりROM制限が前景化します。


腱板損傷との鑑別ポイント(要約)

  • 年齢:五十肩は40〜50代女性に多い/腱板損傷は60歳以降、男性にやや多い

  • 痛みの場所:五十肩は肩前面(烏口突起周囲の圧痛が多い)/腱板損傷は肩外側が多い。

  • 筋力低下:五十肩は著明な筋力低下なし/腱板損傷は筋力低下あり

  • 拘縮:五十肩は全方向で強い/腱板損傷は拘縮軽度〜中等度

  • 画像:五十肩はX線異常なし(造影で容量低下)、腱板損傷はAHI狭小化・断裂所見など。


痛みの出方(よくある3場面)

  • 運動時痛:軽度炎症+機械的刺激で増悪。

  • 安静時痛:強い炎症期の特徴。刺激がなくても痛む。

  • 夜間痛:臥位で烏口肩峰アーチが狭くなり虚血性に増悪。→肩の下にタオルを入れる等のポジショニングが有効。


拘縮の理由と制限因子

  • 非収縮性組織(関節包・靱帯)の肥厚・癒着が主因。

    • 外旋制限:前方関節包/上・中関節上腕靱帯/烏口上腕靱帯

    • 屈曲制限:後下方関節包/下関節上腕靱帯

    • 外転制限:前下方関節包/下関節上腕靱帯

  • **収縮性組織(拮抗筋の短縮)**も関与:

    • 内旋制限=小円筋・棘下筋等 / 外旋制限=大胸筋・広背筋・大円筋・肩甲下筋

  • 初期は防御性収縮がROM低下の主因 → 中期以降は関節包の瘢痕化が主因に。


エビデンス(要点)

  • 第Ⅰ期

    • ステロイド注射:有効(疼痛軽減)

    • 痛くない範囲の自動運動:有効

    • 関節モビライゼーション:無効/逆効果になりやすい

  • 第Ⅱ期

    • 関節モビライゼーション:有効(短縮方向の最終域で丁寧に)

    • 深部温熱(例:マイクロ波):有効
      ※強い痛みを伴う介入は防御性収縮を助長し逆効果。


病期別リハビリ戦略

第Ⅰ期(疼痛期)

  • 目標:炎症鎮静・睡眠確保・防御性収縮の抑制

  • 医療:ステロイド注射+NSAIDs(医師判断)

  • リハ:

    • 振り子運動(コッドマン体操):肩を脱力し前後左右に小振幅で。

    • 痛くない範囲の自動運動のみ。強圧マッサージや関節モビリゼーションは回避

    • 夜間ポジショニング:患側の下にタオル、側臥位で抱き枕も可。

第Ⅱ期(拘縮期)

  • 目標:関節包の短縮改善+周囲筋のリラクゼーション

  • 介入:

    • 軽いマッサージ&低負荷反復収縮で緊張低下を促す。

    • 深部温熱(マイクロ波等)→最終域での関節モビライゼーション

    • 在宅:痛気持ちいいレベルのストレッチを短時間高頻度で。

第Ⅲ期(寛解期)

  • 目標:可動域の実用回復・機能再獲得

  • 介入:

    • 最終域保持+関節包の後下方・前方への滑り付与(制限方向へ)。

    • 重力下(座位・立位)でも再学習。壁登り、棒体操、プーリー等で反復可動

    • 肩甲帯の協調性(肩甲上腕リズム)を整えるローカル筋活性化


在宅セルフケア(共通)

  • 痛みが強い日は無理しない。翌日に反動痛が残らない範囲で。

  • 1日数回×短時間の反復が効果的(“ちょっとずつ、何度も”)。

  • 睡眠最優先:横向き+枕高の最適化、患側下にタオル。

  • 糖尿病の方は血糖コントロールが回復に寄与。


よくある質問(Q&A)

Q1. どのくらいで治りますか?
A. 典型例は1〜2年で自然寛解。ただし初期の痛み→のち拘縮という流れをたどるため、病期に合った対処で体感の回復は早められます。

Q2. 痛くても動かした方がよい?
A. 第Ⅰ期は痛くない範囲のみ。強い痛みを我慢する運動は逆効果第Ⅱ〜Ⅲ期最終域の丁寧な動員へ切り替えます。

Q3. 温める/冷やす はどっち?
A. 強い炎症期はアイシング短時間が無難。拘縮主体の時期は深部温熱(マイクロ波等)+動員が有効です。

Q4. ジョイント音や引っかかりがあるが大丈夫?
A. 拘縮期には最終域での突っ張り感や軽い雑音はよくあります。鋭い痛み・急な筋力低下を伴う場合は再評価を。

Q5. 腱板断裂が心配です。見分け方は?
A. 強い筋力低下・肩外側痛・挙上時の引っ掛かり、60歳以上・球技歴あり等は腱板損傷のサイン。医師に相談し超音波/MRIで鑑別を。

Q6. 病院に今すぐ行くべき症状は?
A. 発熱や外傷直後の激痛、安静でも増悪する夜間痛が長期持続、著明な筋力低下・しびれなどは早期受診を。


最終更新:2025-10-06