小腰筋(psoas minor)

小腰筋の概要

小腰筋の起始停止

小腰筋は大腰筋の前面に寄り添う細い筋で、存在しない人も多い(おおむね半数未満〜約半数の頻度)
腸恥隆起(iliopubic eminence)と腸腰筋膜に停止し、腰椎の軽い屈曲(骨盤後傾)や腸腰筋膜の緊張(求心化の補助)に関与する。股関節はまたがらないため、直接の股関節屈曲筋ではない点が重要(腱膜を介した間接的影響は起こり得る)。

基本データ

項目 内容
支配神経 腰神経叢枝(L1腹側枝)
髄節 L1
起始 T12–L1椎体前面およびその椎間円板
停止 腸恥隆起(pectineal line 近傍)+腸腰筋膜
栄養血管 腸腰動脈の腰枝
動作 椎屈曲・骨盤後傾の補助腸腰筋膜の緊張による前方安定化

触診・評価(現実的なコツ)

  • 体位仰臥位。股関節・膝関節は軽屈曲で腰椎をリラックス。

  • 誘導股関節は動かさずに「腰をベッドへ軽く押し付ける(骨盤後傾)」動作をしてもらう。

  • 触診ポイント鼠径靭帯直上・縫工筋内側深部大腰筋前方の帯状緊張を探る。

  • 鑑別股関節屈曲を加えると大腰筋が強く収縮する。股関節を静止させたまま骨盤後傾だけで緊張が立つのが小腰筋の手がかり。

  • 注意非常に小さく深いため、徒手での分離触知の信頼性は限定的。必要なら超音波で確認。


ストレッチ

  • ねらい:小腰筋は腰椎屈曲/骨盤後傾に働く → 腰椎伸展+骨盤前傾で伸張。

  • 方法例

    1. プレスアップ(コブラ):腹臥位→前腕or手掌で胸郭を持ち上げて腰椎を伸展殿部はリラックス

    2. 片膝立ち(ハーフニー):後脚側は骨盤を前傾しつつ体幹を軽く前へ。腰椎を反らせるのではなく骨盤前傾で伸張感を出す。

  • 共通の注意腰椎の痛みが出る角度は回避、反動はNG。


ちょいトレ(必要なケースに)

  • 骨盤後傾の等尺保持:仰臥位で腹圧を入れつつ腰背部を床へ軽く押す(5–8秒×数回)。

  • 狙い小腰筋の補助的活動+腹圧を併用し、過剰前弯パターンの是正に役立てる。

  • 積極的強化が必要な症例は少ない。多くは姿勢・呼吸・コア制御で十分。


よくある誤解とQ&A

Q1:小腰筋は股関節屈曲の主力?
A:いいえ股関節は跨がないため直接の屈曲筋ではない。腱膜を介して腸腰筋の滑走・張力に影響する間接的寄与はあり得る。

Q2:存在しないと困る?
A:基本的に問題なし。人によって正常変異。症状は姿勢・運動連鎖の改善で十分対応できることが多い。

Q3:腹直筋と同じストレッチでいい?
A:概ねOK。腰椎伸展+骨盤前傾屈曲筋群をまとめて伸ばせる。ただし腰痛が出る角度は避ける。

Q4:触診で確信が持てない
A:徒手単独の識別は難しい股関節を動かさない骨盤後傾で反応が残るかを指標にし、必要なら超音波で確認。

Q5:前面の詰まり感の原因になり得る?
A:主因は大腰筋/腸腰筋腱であることが多い。可動域・姿勢で改善しないときに小腰筋や筋膜の関与を検討。


最終更新:2025-10-07