肘外側痛は「局所のオーバーユース」「外傷」「頚椎からの関連痛」の大きく3系統に分けられます。臨床で多い病態に絞って、機序→所見→対応を整理しました。
① 上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(OCD)
背景
肘は生理的に約10〜15°の外反(運搬角)をとります。投球や体重支持(体操など)で腕橈関節(上腕骨小頭×橈骨頭)に剪断・圧縮ストレスが反復し、小頭の軟骨下骨の循環障害→骨軟骨片の分離へ。遊離片は関節ネズミとしてロッキング・激痛を起こします。
所見のポイント
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投球・荷重での肘外側痛、引っかかり感/可動域制限
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進行でロッキング(屈伸不能)
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X線・MRI・超音波での軟骨下変化/遊離片
対応
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オーバーユースの中止・安静(まず保存)
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骨端線が開大している時期は保存での修復期待。閉鎖後は自然治癒が乏しく、鏡視下ドリリング・骨片固定・デブリドマン等を検討。
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競技復帰は痛み消失+可動域/筋力回復後に段階的に。
② 前腕伸筋群の障害(外側上顆炎を含む)
背景
外側上顆〜その周辺には
短橈側手根伸筋(ECRB:最頻)/総指伸筋(EDC)/尺側手根伸筋(ECU)/小指伸筋(EDM)/回外筋/肘筋などが関与。把持+手関節背屈・回外の反復で**腱付着部炎(テニス肘)**を生じます。
※ECRLは上腕骨外側上顆ではなく上腕骨外側顆上稜起始ですが、臨床的には橈側伸展ストレスで関与します。
動作で原因を絞る
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手関節背屈で痛い:EDC/ECRB
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橈屈で痛い:ECRB/ECRL
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尺屈で痛い:ECU
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肘伸展で痛い:肘筋
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回外で痛い:回外筋
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小指伸展で痛い:EDM
検査:Cozen(抵抗下背屈)、Mill(伸張)、Maudsley(中指伸展抵抗)
対応
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疼痛期は負荷回避・短期固定/テーピング、必要時NSAIDs・物理療法
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痛みが引いたら伸張性・遠心トレ(ECRB中心)、把持フォーム修正、肩甲帯・体幹連鎖の最適化
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難治例は注射療法や鏡視下処置を検討
③ 肘外側側副靱帯(LCL)損傷
背景
転倒での内反強制+軸圧+前腕回外などで外側側副靱帯複合体(特に橈骨輪状靱帯・外側尺側側副靱帯=LUCL)を損傷。**後外側回旋不安定性(PLRI)**の原因になります。
所見
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体重支持やドア押しでの抜け感
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Chair push-up test/Pivot-shift(PLRI)/posterolateral drawer陽性
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圧痛は外側靱帯線維沿い
対応
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軽症:短期固定→可動域回復→外側支持筋(回外筋・伸筋群)・肩甲帯の強化
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不安定性が残る/再発例:靱帯再建を検討
④ 頚椎症性神経根症(関連痛)
背景
C5–C7の変性/ヘルニアで神経根を圧迫。C6神経根は前腕外側〜母指の知覚を司り、肘外側に関連痛を訴えることがあります。
所見
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スパーリング/フォアアームの知覚低下、上腕二頭筋腱反射変化(C6)
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肘局所の圧痛・抵抗テストが乏しい/頚部肢位で症状変動
対応
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多くは保存(3か月で自然軽快期待):頚部の牽引・モビライゼーション・姿勢介入
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進行性麻痺/難治痛は手術適応を検討
すぐ役立つ鑑別のコツ
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ロッキング+激痛 → OCDや関節ネズミをまず除外
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抵抗下背屈で局所痛 → 外側上顆炎(ECRB主体)
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抜け感・支持痛 → LCL損傷/PLRIを疑う
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頚の動きで増悪、前腕外側のしびれ → C6神経根
よくある質問(Q&A)
Q1. テニス肘は安静だけで治りますか?
A. 痛みの急性期は安静が有効ですが、再発予防には遠心トレーニングと把持・手首の使い方の修正が必須です。
Q2. ロッキングが出たらどうする?
A. 遊離体の可能性が高く緊急度高め。 無理に動かさず整形外科で画像確認・鏡視下処置を含めて相談してください。
Q3. LCL損傷はテーピングでスポーツ復帰できますか?
A. 軽症なら一時的に可能ですが、不安定性が残れば再受傷リスクが高いです。客観テストで安定化を確認してから段階復帰を。
Q4. 肘外側の痛み、頚から来ているかの簡単チェックは?
A. 頚部伸展・回旋で肘外側の症状が再現/増悪し、局所抵抗テストが陰性寄りなら頚性を強く疑います。
最終更新:2025-10-06



