姿勢分析は「運動連鎖」を理解したら簡単にできる

姿勢分析は「パーツの寄せ集め」ではなく、重心(CoG)を真ん中に保つための連続調整を見抜く作業です。
その調整の仕組み=運動連鎖には再現性あるパターンがあります。本稿では前額面・矢状面・水平面の三方向から、評価と介入の勘所をコンパクトに整理します。


1|運動連鎖はなぜ起きる?

  • 目的:重心を中央に保ち、筋活動コストを最小化するため

  • 効用:不要な共同収縮が減り、**即応性(リバランス能力)**が上がる

  • 逆に:連鎖のどこかが可動性低下/筋力不足/痛みで滞ると、遠位・近位へ過剰波及しやすい


2|三平面でみる運動連鎖(基本パターン)

A. 矢状面(前後)

姿勢分析と運動連鎖|矢状面

例:足関節背屈↑ → 重心 前方へ
→ 膝屈曲で戻す → 股関節屈曲 → 骨盤後傾 → 腰椎屈曲(後弯)
→ 前方化が大きければ頭部過伸展で最終補正

実際は、より近位の最小ユニット(膝・股・体幹伸展)で吸収されることが多い。
波及が頭部まで及ぶのは、主要節の可動性/筋力/疼痛に制限があるサイン。

B. 前額面(左右)

姿勢分析と運動連鎖|前額面

例:足関節内反(距骨下関節の内反) → 重心 外側化
→ 膝内反(機能的脚長差) → 股外転 → 骨盤傾斜(低位側へ)
→ 下位脊柱側屈 → 上位脊柱は対側側屈で戻す → 頭部はさらに逆方向側屈で正中維持

多くは膝・股で完結。骨盤・頭頸部に及ぶなら下位の調整余地が乏しい可能性。

C. 水平面(回旋)

姿勢分析と運動連鎖|水平面

例:足部の内反=底屈+内転
→ 下腿内旋 → 相殺で大腿外旋 → 相殺不足なら骨盤前方回旋 → 腰椎回旋
→ 上位脊柱は対回旋、頭部も対回旋で視線正中を保つ


3|連鎖が「止まる/止まらない」条件

  • 止まる:近位の**可動域・筋出力・感覚入力(固有感覚)**が十分

  • 止まらない:どこかでROM不足・痛み・筋出力遅延がある(高齢者の円背や圧迫骨折後は典型)


4|調整に失敗/成功したときの身体

運動連鎖で姿勢を調整できない場合

  • 失敗(重心ずれを筋収縮で代償)

    • 易疲労性・動的バランス低下・転倒リスク↑

    • 長時間保持が困難(持続的筋緊張で循環不良)

  • 成功(連鎖で重心を戻す)

    • 省エネだが、長期的には骨配列の偏位や筋の短縮/虚血を助長しうる

    • “戻せている=最適”ではない:原位へのリセンタリングが理想


5|評価ステップ(現場での使い方)

  1. 三平面スクリーニング

    • 矢状:立位で足背屈↑時の体幹伸展の出方/出ないならどこで止まる?

    • 前額:片脚立位で骨盤水平維持の可否(中殿筋 or 代償パターン)

    • 水平:足部の内外転→下腿回旋→股回旋の連結の滑らかさ

  2. 最小限で重心が戻る節主要節を特定

  3. 阻害因子を特定

    • ROM(関節/筋腱/筋膜)、痛み、筋出力のピークタイム遅延、固有感覚低下

  4. テスト介入で可逆性を確認

    • 例:足部内反に対し距骨下関節の外反誘導+足背外側荷重→ 直後の骨盤傾斜が減るか?


6|介入の原則(リハ設計の順序)

  1. 可逆性のある制限から

    • 軟部組織(短縮筋・筋膜滑走)→ 関節モビリティ → 痛みコントロール

  2. 主要節の安定化

    • 近位求心性(股関節周囲/体幹)・反応速度(中殿筋や深層外旋筋は特に)

  3. 重心リセンタリング

    • 足部~骨盤の荷重ライン再教育(立位・歩行でのフィードフォワード再学習)

  4. 不可逆要因(変形・固定後)には

    • 可動節のROM拡張筋力強化補装具実用的中間位を確保

例:膝伸展制限が不可逆 → 足関節背屈・股伸展/外旋を拡げ、ヒップストラテジーを優先学習。必要に応じてソールウェッジ等で前後・左右の重心線を調整。


7|よくある誤り(つまずきポイント)

  • 単一面だけで判断(三面セットで観る)

  • “見える代償”だけを消す(元の制限を放置)

  • 筋力のみ強化してピークタイム遅延を放置

  • 連鎖を頭部まで“均一に”波及する前提で考える(臨床はもっと局所完結)


8|ミニプロトコル(臨床でそのまま使える例)

  • 中殿筋の反応速度低下×トレンデレンブルグ傾向

    1. 股関節内外旋ROM/股関節内転筋の過緊張を処理

    2. 50%1RM×高加速度の外転・外旋コンビ(レジスタンス短時間)

    3. 片脚立位で骨盤水平保持→軽度サイドステップ(鏡・メトロノーム)

    4. 歩行で速度を段階増加しながら骨盤傾斜の消失時間を短縮


Q&A(よくある質問)

Q1. 「正しい立位」はありますか?
A. 個人差があります。指標は省エネ性(呼吸・会話が楽)と微小外乱への即応性。三面で過剰代償が少ない立位を「あなたの正解」とします。

Q2. どこから治せばいいか迷います。
A. 最小介入で重心が戻る節=主要節から。テスト介入で変化が最も大きいところが「入口」です。

Q3. ROMと筋力、どちらを先に?
A. 痛み/ROM→安定化→再学習が鉄則。可動性なき筋力強化は代償強化になりがち。

Q4. 高齢者で頭部まで代償が波及します。
A. 体幹伸展の可逆性が低いことが多い。股・足での調整力を拡げ、必要なら補装具で静的中間位をまず確保。

Q5. 連鎖評価の時短コツは?
A. **足部(距骨下)→骨盤(水平/前後傾)→頭部(側屈/回旋)**の3点チェックをルーチン化。所要1分。


最終更新:2025-10-05