この記事では、小円筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
この記事の目次はコチラ
小円筋の概要
小円筋は肩甲骨外側縁の後面から起始し、上腕骨大結節の下面に停止している肩関節外旋の主力筋です。
大円筋と名前は似ていますが支配神経も作用も異なっており(大円筋は内旋運動)、作用は棘下筋とほとんど同じになります。
小円筋は起始から停止に向かって捻れた走行をとるため、停止部における上部筋束は起始では下方に、下部筋束は起始部では上方に位置します。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 腋窩神経 |
髄節 | C5-6 |
起始 | 肩甲骨後面の外側縁 |
停止 | 上腕骨の大結節下部、肩関節包 |
栄養血管 | 後上腕回旋動脈、肩甲回旋動脈 |
動作 | 肩関節の外旋 |
筋体積 | 39㎤ |
筋線維長 | 5.7㎝ |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
肩関節外旋 |
1位 | 棘下筋 |
2位 | 小円筋 |
3位 | 三角筋(後部) |
※小円筋は肩関節屈曲90度での外旋運動に最も貢献します。
回旋筋腱板
![]() |
回旋筋腱板は別名「ローテーター・カフ」とも呼ばれており、上腕骨頭を回転させる動き(rotator)を持っています。
肩関節は関節窩に対して骨頭が大きいため、骨頭の位置がズレると脱臼したり、肩峰に衝突してしまう恐れがあります。
そのため、その場で上手くコロコロと回転できる必要があり、その役目を小円筋を含む回旋筋腱板が担っているわけです。
肩関節には強力な靱帯が存在しないために、可動範囲が大きい利点と安定性が低い欠点があり、その欠点を骨頭を囲む筋肉で補っています。
小円筋の触診方法
![]() |
小円筋は棘下筋と大円筋の間に位置しており、筋肉の大部分は三角筋後部に覆われているため、直接触れられるのは起始の一部のみです。
写真では、3rdポジション(肩関節90度屈曲位)での外旋運動にて、小円筋が収縮するのを起始付近で触知しています。
1st(下垂位)では小円筋は活動しにくく、2nd(90度外転位)では棘下筋の下部線維と区別しにくいため、3rdで確認する必要があります。
小円筋は健常者でも緊張・圧痛が認められやすい部位であるため、少し圧迫を加えて緩めることで肩関節屈曲の角度が容易に向上します。
ストレッチング
![]() |
肩関節を150度屈曲・内旋位、肘関節は軽度屈曲位にして、反対の手で肘を斜め上方に引き寄せていきます。
筋力トレーニング
![]() |
小円筋は肩関節90度屈曲位で最も活動するため、机のうえに肘を置いた状態で両手にゴムバンドを握り、肩関節を外旋させます。
圧痛点と関連痛領域
![]() |
小円筋は棘下筋と共にトリガーポイントを形成しやすく、硬くなりやすい筋肉のひとつになります。
小円筋の短縮があると、上腕骨骨頭を関節窩前方に押し出そうとする力がかかり、次第に肩関節後方の関節包にも短縮が生じます。
そうすると上腕骨頭の後方すべり運動が制限され、肩関節の水平内転時に骨頭が前方に変位し、肩前方に痛みが起こります。
その場合は肩関節モビライゼーションを実施することで、短縮した後方関節包を引き伸ばすようにしていきます。
関連する疾患
- 肩関節周囲炎
- 投球障害肩
- 腱板損傷
- 腋窩神経麻痺 etc.
腱板損傷
腱板損傷のほとんどは棘上筋腱断裂であり、それに次いで棘下筋、肩甲下筋が断裂しやすい状態にあります。
腱板の中で小円筋が最も断裂しにくい筋肉で、理由としては骨頭下方に付着しているためにインピンジメントを起こしにくいからです。
腋窩神経麻痺
![]() |
小円筋は腋窩神経や後上腕回旋動脈の通り道である四角間隙を構成しているため、問題が生じると腋窩神経に麻痺が起こる場合があります。
腋窩神経麻痺は肩関節外側の知覚異常を起こすことになるため、関連痛以外にも神経の影響が関与する可能性があります。