棘下筋(infraspinatus)

棘下筋の概要

棘下筋の起始停止

  • 棘下筋は肩甲骨の棘下窩から起こり、上腕骨大結節の中部〜前部および関節包に付着する外旋の主力筋

  • 回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の一員で、骨頭を求心位に保つ安定化に大きく寄与します。

  • 線維配列で役割が少し違い、上部(横走)線維は外転に補助的下部(斜走)線維は内転に補助的に働きます。

  • 近年の報告では停止は従来の「大結節中部」より前方まで広範囲に及ぶことが示されています(棘上筋の一部は小結節に連続)。

基本データ

項目 内容
支配神経 肩甲上神経
髄節 C5-6
起始 肩甲骨の棘下窩
停止 上腕骨の大結節中部、肩関節包
栄養血管 肩甲上動脈、肩甲回旋動脈
動作 肩外旋(主力)、上部:外転補助/下部:内転補助
肩屈曲90°屈曲位で水平外転に作用
筋体積 225
筋線維長 6.8
速筋:遅筋(%) 54.745.3

運動貢献度(目安:外旋)

順位
1位 棘下筋
2位 小円筋
3位 三角筋(後部)

※外転・内転への直接貢献は大きくないが、**腱板としての求心化(スタビリティ)**の影響は臨床的に大きい。

棘下筋の触診方法

①上部線維(横走)

  • 肩を下ろした1stポジションで外旋抵抗をかけると収縮を触れやすい。

②下部線維(斜走)

  • 外転90°(2nd)で外旋抵抗をかける。

屈曲90°(3rd)では棘下筋のベクトルが水平外転寄りになり、外旋主働は小円筋に移る

ストレッチ方法

  • 姿勢:肩屈曲約100°+内旋、肘軽屈曲。反対手で肘を斜め上方に引き寄せる。

  • 注意:棘下筋や後方関節包が短縮し骨頭が前方偏位していると、前肩部痛を誘発します。前方痛がないことを確認し、痛みは“違和感まで”で中止。

筋力トレーニング

  • 1st外旋(横走線維メイン):肘90°で体側、0.5〜2kgの重りチューブで外旋

  • 応用:サイドライイング外旋(側臥位で肘90°、小重量で可)。90/90外旋(外転90°位)は上級者向け。

  • 反動を使わずゆっくり、肩甲骨の過度な後傾・挙上は抑える。

トリガーポイント(TP)

  • 痛みの主座:肩前部〜外側の深部痛(二頭筋溝付近まで及ぶことが多い)

  • 放散:上腕外側 → 前腕橈側 → 母指側まで(関連痛)

  • 動作制限:外旋・内旋がしづらく、背中に手が回らない/上着の着脱がつらい

  • 関連記事:棘下筋のトリガーポイント徹底ガイド

クリニカルTips(癒着・滑走不全)

  • 癒着好発:棘下窩遠位〜上腕骨寄り(付着が薄い領域)

  • リリース:皮膚—筋の二枚重ねを意識した浅層摩擦→必要に応じ層間スリップを小さく作る(強圧は禁忌

  • 滑走不全骨頭前方偏位→前肩痛に直結。後方組織の伸張性回復が鍵。


鑑別が必要な状態

  • 腱板損傷:特に広範断裂(棘下まで)→挙上困難・明確な筋力低下、手術検討

  • 肩関節不安定症:求心化破綻→インピンジ増悪。腱板+肩甲帯の同時強化

  • 肩甲上神経障害:棘下切痕での絞扼→棘下単独萎縮(若年アスリートに多い)

  • 肩関節周囲炎:後方拘縮・滑走不全を伴いやすい


よくある質問(Q&A)

Q1. 小円筋との違いは?
A. どちらも外旋筋ですが、外転90°(90/90)での外旋は小円筋が主働になりやすく、棘下筋は水平外転寄りに働きます。安定化は両者で協調。

Q2. 外旋トレで肩前が痛い…
A. 骨頭前方すべりの可能性。肘を体側に軽く押し当て、肩甲骨を下制・軽度後退してから軽負荷で開始。痛ければ中止し評価を。

Q3. ストレッチは毎日やってOK?
A. 痛みがない範囲で可。投球など高負荷日は短時間・低強度に。前方痛が出る場合は後方包の軽いモビリゼーション→温熱→低強度ストレッチの順が安全。

Q4. しびれや筋萎縮が片側だけある
A. 肩甲上神経障害の可能性。早めに医療機関で評価(筋電図・MRI等)を。

Q5. 外旋可動域を増やすコツは?
A. 胸椎伸展と肩甲骨後傾・外旋を先に作ると、棘下筋に無理なく外旋が入ります。


最終更新:2025-09-14