野球肩(投球障害肩)は「どの組織が痛んでいるか」でリハの方針が変わります。
本記事は、①原因と症状の見分け方、②炎症期の対処、③肩甲骨の鍛え方、④投球再開までの段階を分かりやすく解説します。
野球肩(投球障害肩)とは?
野球肩とは、投球動作の繰り返しによって肩関節に障害が起こる総称で、代表的なものに以下があります。
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腱板炎/滑液包炎:外転90°付近で痛い/上着の袖通しで痛む
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長頭腱炎:結節間溝の圧痛/前方で物を持ち上げると痛い
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SLAP:引っ掛かり感・「ガクッ」/頭上動作で違和感
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棘下筋:投球翌日の肩後方の張り→投球中の痛みに移行
好発年齢は 10〜16歳(ピークは15歳前後) で、特に投手に多いため「野球肩」または「投球障害肩」と呼ばれます。
主な発症要因は過使用(オーバーユース) ですが、フォームの崩れや身体の柔軟性不足などによる誤用(ミスユース)も原因となります。
投球フォームと肩にかかる負担
投球動作は大きく6つの時期に分けられます。それぞれの局面で肩関節にかかるストレスが異なり、特定の障害と関連します。
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| 時期 | 特徴 |
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| ワインドアップ | 軸足にエネルギーをため込む |
| 前期コッキング | 前足接地前、肩が最大水平外転位 |
| 後期コッキング | 前足接地後、肩関節が最大外旋位 |
| 加速期 | ボールが手を離れるまで。肩・肘に最も大きな負担 |
| 減速期 | リリース後に腕の振りを減速する |
| フォロースルー | 投球終了まで。肩後方の筋肉や靭帯が引き伸ばされる |
臨床では後期コッキングと加速期でピークストレスが重なりやすく、腱板炎やSLAP、滑液包炎の主戦場になります。
疾患別の考え方とリハのコツ
①腱板損傷(特に棘上筋腱):「肩甲骨の“土台作り”→腱板」が基本
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起こりやすいフォーム:胸椎伸展・肩甲骨内転が乏しく、肘が肩甲平面より後方へ入りすぎる。
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初期:安静+炎症管理、胸椎伸展・小胸筋ストレッチ。
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筋力:僧帽筋中下部・菱形筋など肩甲骨安定化→腱板。
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目安:疼痛1か月、強化2か月、競技復帰3〜6か月。
②肩峰下滑液包炎:「インピンジメントを減らす可動性+動作修正」
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特徴:外転90°付近で疼痛。
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方針:腱板損傷と同様の介入(インピンジメントを減らす可動性+肩甲骨制御)。
③上腕二頭筋長頭腱炎・SLAP損傷:「トップで“後ろに入りすぎ”を作らない」が肝
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腱炎:摩擦・伸張で炎症。2〜3週間の安静で改善することが多い。
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SLAP:長頭腱付着部で関節唇剥離。不安定感/ガクッ。保存で難渋→手術検討(縫合安定まで約4か月、復帰はさらに3〜6か月)。
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フォーム:トップで腕が両肩ラインより後ろ→伸張・摩擦↑。リリースで牽引が増す姿勢(身体が横に倒れるなど)に注意。
④棘下筋腱炎:「手投げの是正と全身連動」
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局面:リリース後〜フォロースルーの減速で過負荷。
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方針:安静・ストレッチ → 手投げの是正(胸を張る、体幹・下肢の連動)。
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併存制限:前腕回内・股関節内旋/内転の制限は肩の過剰内旋代償を招くため改善。
少年野球の注意点について
リトルリーガー(9〜12歳)で投球数が多いほど肩障害リスクは大きく上昇することが報告されています。
成長期の肩は未成熟で「消耗品」であるため、保護者・指導者は練習量を管理し、痛みを訴えたら即時に投球を中止してください。
また、障害を未然に防ぐためにも、登板間隔と投球数を管理することが大切です。
リハビリの進め方(共通ロードマップ)
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痛みのコントロール:練習量の調整、連投回避、アイシング/物理療法(必要に応じて)。
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可動性の改善:胸椎伸展、小胸筋ストレッチ。後方タイトネスが疑われる場合は後下方関節包ストレッチ
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肩甲骨安定化:僧帽筋中下部・菱形筋、前鋸筋。
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腱板強化:低痛域での外旋/挙上。
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フォーム再学習:各疾患に応じて修正
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段階的投球復帰(例) ※翌日の痛み0-2/10なら次へ。痛み増悪があれば1段階戻す。
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ネットスロー:5m×30球 ×2–3日
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キャッチボール:10m→15m→20m(各30球)
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強度アップ:5割→7割→8割(各30球)
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マウンド立ち:7割×20球 → 8割×20球
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仕上げ:全力×20–30球(ブルペン)
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野球肩を予防するためのリハビリ・セルフケア
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投球前後のストレッチ(小胸筋・肩甲骨周囲)
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肩甲骨の安定化トレーニング(僧帽筋中下部、菱形筋)
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下肢・体幹の柔軟性維持(股関節・胸椎の可動性)
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投球フォーム改善(肘が後方に入りすぎない/身体の開きを抑える)
よくある質問(FAQ)
Q. 痛みがあるまま投げてもいい?
A. ダメ。痛みはNG信号。悪化リスクが高いので中止し、数日で改善しなければ受診を。
Q. まず直すべきは?
A. 可動性(胸椎/肩甲帯/関節包)→肩甲骨安定化の順。土台が不十分だとフォームを直しても再発。
Q. いつ投球再開?
A. 日常/リハで0–2/10の痛み、翌日悪化なしを確認 → 段階的に距離・強度を上げる。
Q. 画像検査はいつ受けるべき?
A. 外傷歴がある、夜間痛が強い、3〜4週間で改善が見られない、脱力感や可動域制限が目立つ場合は医療機関で評価(超音波やMRI)を検討します。
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最終更新:2025-08-21
