大腿骨(femur)に付着する筋肉や各部位の名称について解説していきます。
大腿骨の概要
大腿骨は人体で最大の長管骨であり、上端は寛骨と股関節を構成し、下端は脛骨と脛骨大腿関節(膝関節)、膝蓋骨と膝蓋大腿関節を構成しています。
骨盤が筋肉の起始を多く持つ静的な骨に対して、大腿骨は筋肉の停止を多く持っており、動的な骨と表現することもできます。
各部位の名称と役割について
1.前面から見た大腿骨 |
2.後面から見た大腿骨 |
大腿骨頭 | 【関節】寛骨の関節窩と股関節を構成 |
大腿骨頭窩 | 【付着】大腿骨頭靱帯 |
大腿骨頸 | 【付着】関節包が付着する |
【特徴】約125度の角を形成 | |
大転子 | 【起始】外側広筋(一部) |
【停止】中殿筋,小殿筋,梨状筋 | |
小転子 | 【停止】大腰筋,腸骨筋 |
転子窩 | 【停止】内外閉鎖筋,上下双子筋 |
転子間稜 | 【停止】大腿方形筋 |
大腿骨体 | 【特徴】少しだけ外側に弯曲している |
内転筋結節 | 【停止】大内転筋(ハムストリング部) |
内側顆 | 【関節】脛骨の内側顆と脛骨大腿関節を構成 |
【付着】前十字靭帯 | |
内側上顆 | 【起始】腓腹筋内側頭 |
【停止】大内転筋(ハムストリング部) | |
【付着】内側側副靭帯 | |
外側顆 | 【関節】脛骨の外側顆と脛骨大腿関節を構成 |
【停止】半膜様筋の一部 | |
【付着】後十字靭帯 | |
外側上顆 | 【起始】膝窩筋,腓腹筋外側頭,足底筋 |
【付着】外側側副靭帯 | |
膝蓋面 | 【関節】膝蓋骨と膝蓋大腿関節を構成 |
殿筋粗面 | 【停止】大殿筋(上側) |
恥骨筋線 | 【停止】恥骨筋 |
外側唇粗線 | 【起始】外側広筋,大腿二頭筋短頭 |
内側唇粗線 | 【起始】内側広筋 |
【停止】大内転筋(内転筋部),長内転筋,短内転筋 | |
顆間窩 | 【特徴】内外顆の間にある凹みで前後十字靭帯が走行 |
大腿骨頸部の骨梁
骨はただ硬いだけでなく、折れにくいように中には骨梁といった網状の支柱がいくつも張り巡らされており、互いに補強し合って力学的強度を増しています。
大腿骨頚部は外力が加わりやすく、骨折しやすい部位とされていますが、外力に耐えられるように特徴的な骨梁の構造を持っています。
骨粗鬆症になると骨がスカスカになって骨折しやすくなると言われますが、中の骨梁が萎縮して、その機能を失うことが大きな原因のひとつです。
大転子骨梁 | 大転子に加わる圧縮力に抗する |
主・副圧縮骨梁 | 大腿骨に加わる圧縮力に抗する |
主・副引張骨梁 | 大腿骨が曲がる方向への力に抗する |
Adams弓 | 頚部から骨幹部の内側の厚い強固な骨皮質部 |
Wardの三角 | 網構造の疎な部分。骨折の好発部位 |
大腿骨の頚体角
頚体角とは、大腿骨体の長軸と大腿骨頚の長軸がなす角度で、正常な成人では125-130度となっています。(新生児は150度)
正常値よりも角度が小さい場合を内反股、角度が大きい場合を外反股といいます。内反股では荷重方向への引張力(剪断力)が増し、外反股では圧縮力が増します。
正常 | 内反股 | 外反股 |
大腿骨に付着している筋肉
大腿骨に起始や停止を持つ筋肉について掲載しています。各筋肉の詳細をみたい場合は筋名をクリックしてください。
大腿骨に起始がある筋肉
筋肉 | 起始部 |
中間広筋 | 大腿骨の前面および外側面 |
内側広筋 | 大腿骨転子間線から伸びる大腿骨粗線の内側唇 |
外側広筋 | 大転子の外側面、転子間線、殿筋粗面および粗線の外側唇 |
大腿二頭筋短頭 | 外側唇の中部1/3と外側筋間中隔 |
膝窩筋 | 外側上顆 |
腓腹筋 | 外側上顆,内側上顆 |
足底筋 | 外側上顆 |
大腿骨に停止がある筋肉
筋肉 | 停止部 |
大腰筋 | 小転子 |
腸骨筋 | 小転子の下方 |
大殿筋(上側) | 殿筋粗面 |
中殿筋 | 大転子の尖端と外側面 |
小殿筋 | 大転子の前面 |
梨状筋 | 大転子の尖端と内側面 |
内閉鎖筋 | 大転子の転子窩 |
外閉鎖筋 | 大転子の転子窩 |
上双子筋 | 大転子の転子窩 |
下双子筋 | 大転子の転子窩 |
大腿方形筋 | 転子間稜 |
恥骨筋 | 大腿骨粗線の近位部と恥骨筋線 |
大内転筋 | [筋性部]大腿骨粗線の内側唇、[ハムストリング部]内転筋結節、 |
長内転筋 | 内側唇の中部1/3の範囲 |
短内転筋 | 内側唇の上部1/3の範囲 |
半膜様筋 | 外側上顆 |
※半膜様筋は停止の一部を大腿骨に持つ